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参考資料

【逐条解説】行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等


第1章 総則

第2章 個人番号

第3章 個人番号カード

第4章 特定個人情報の提供

第1節 特定個人情報の提供の制限等

第2節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供

第5章 特定個人情報の保護

第1節 特定個人情報保護評価

第2節 行政機関個人情報保護法等の特例等

第6章 特定個人情報保護委員会

第1節 組織

第2節 業務

第3節 雑則

第7章 法人番号

第8章 雑則

第9章 罰則

附 則

別表第一(利用範囲)

別表第二(情報連携)


【第1章 総則】

【第1条(目的)】

(目的)

第一条この法律は、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図り、かつ、これらの者に対し申請、届出その他の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるほか、個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)及び個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)の特例を定めることを目的とする。

本条では、

@行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにすること、

A@により行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図ること、

B@の者に対し申請、届出その他の手続を行い、又は@の者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減及び本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにすること、

について、必要な事項を定めるほか、

C個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法及び個人情報保護法の特例を定めること

という4つの目的が規定されている。

【第2条(定義)】

(定義)

第二条この法律において「行政機関」とは、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する行政機関をいう。

この法律において「独立行政法人等」とは、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「独立行政法人等個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。

この法律において「個人情報」とは、行政機関個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する個人情報であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものをいう。

この法律において「個人情報ファイル」とは、行政機関個人情報保護法第二条第四項に規定する個人情報ファイルであって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第二条第四項に規定する個人情報ファイルであって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報データベース等であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものをいう。

この法律において「個人番号」とは、第七条第一項又は第二項の規定により、住民票コード(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コードをいう。以下同じ。)を変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。

この法律(第四十五条第四項を除く。)において「本人」とは、個人番号によって識別される特定の個人をいう。

この法律において「個人番号カード」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他総務省令で定める事項(以下「カード記録事項」という。)が電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。第十八条において同じ。)により記録されたカードであって、この法律又はこの法律に基づく命令で定めるところによりカード記録事項を閲覧し、又は改変する権限を有する者以外の者による閲覧又は改変を防止するために必要なものとして総務省令で定める措置が講じられたものをいう。

この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条並びに第六十七条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

この法律において「特定個人情報ファイル」とは、個人番号をその内容に含む個人情報ファイルをいう。

10この法律において「個人番号利用事務」とは、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者が第九条第一項又は第二項の規定によりその保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務をいう。

11この法律において「個人番号関係事務」とは、第九条第三項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務をいう。

12この法律において「個人番号利用事務実施者」とは、個人番号利用事務を処理する者及び個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。

13この法律において「個人番号関係事務実施者」とは、個人番号関係事務を処理する者及び個人番号関係事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。

14この法律において「情報提供ネットワークシステム」とは、行政機関の長等(行政機関の長、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)及び地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)並びに第十九条第七号に規定する情報照会者及び情報提供者をいう。第二十七条及び附則第二条において同じ。)の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、暗号その他その内容を容易に復元することができない通信の方法を用いて行われる第十九条第七号の規定による特定個人情報の提供を管理するために、第二十一条第一項の規定に基づき総務大臣が設置し、及び管理するものをいう。

15この法律において「法人番号」とは、第五十八条第一項又は第二項の規定により、特定の法人その他の団体を識別するための番号として指定されるものをいう。

本条は、本法において使われる主要な用語等について、その意味に疑義が生じないようにし、本法に規定する内容をよりわかりやすいものとするため、定義を設けるものである。

1 「行政機関」(第1項)

この法律における「行政機関」は、行政機関個人情報保護法第2条第1項に規定する行政機関とするものである。

なお、会計検査院については、憲法上の機関としての位置づけを持っており、かつ、内閣に対し独立の地位を有する機関であることを踏まえ、行政機関個人情報保護法上は、会計検査院の保有する個人情報ファイルは、総務大臣への事前通知の対象とされていない。また、会計検査院長が行った開示決定等、訂正決定等及び利用停止決定等に対する不服申立てについては、別途会計検査院に設置される審査会に諮問することとされており、総務大臣は、会計検査院の長に対し、資料・説明の要求及び意見の陳述は行わないこととされている。

本法における会計検査院の取扱いについては、行政機関として、原則として他の行政機関と同様の規制が及ぶこととしつつ、行政機関個人情報保護法上特例が認められる範囲でこれを追認するという考え方がとられている。

2 「独立行政法人等」(第2項)

この法律における「独立行政法人等」は、独立行政法人等個人情報保護法第2条第1項に規定する独立行政法人等とするものである。

3 「個人情報」(第3項)

この法律における「個人情報」は、行政機関個人情報保護法第2条第2項に規定する個人情報であって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第2条第2項に規定する個人情報であって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報保護法第2条第1項に規定する個人情報であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものとするものである。

4 「個人情報ファイル」(第4項)

この法律における「個人情報ファイル」は、行政機関個人情報保護法第2条第4項に規定する個人情報ファイルであって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第2条第4項に規定する個人情報ファイルであって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報保護法第2条第2項に規定する個人情報データベース等であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものとするものである。

5 「個人番号」(第5項)

この法律における「個人番号」は、住民票コードを変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために第7条の規定により指定されるものとするものである。

6 「本人」(第6項)

この法律における「本人」は、個人番号によって識別される特定の個人とするものである。
具体的には、個人番号及びそれに対応する住民票コードが記載された住民票に係る者を意味することとなる。

7 「個人番号カード」(第7項)

この法律における「個人番号カード」は、

氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載、

本人の写真が表示、

ア及びイの事項その他総務省令で定める事項が電磁的方法により記録、

されたカードであって、

ウの事項を閲覧し、又は改変する権限を有する者以外の者による閲覧又は改変を防止するために必要なものとして総務省令で定める措置、

が講じられたものとするものである。

8 「特定個人情報」(第8項)

この法律における「特定個人情報」は、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)をその内容に含む個人情報とするものである。

9 「特定個人情報ファイル」(第9項)

この法律における「特定個人情報ファイル」は、個人番号をその内容に含む個人情報ファイルとするものである。

10 「個人番号利用事務」(第10項)

この法律における「個人番号利用事務」は、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者が第9条第1項又は第2項の規定によりその保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務とするものである(第9条第1項及び第2項の解説参照。)。

11 「個人番号関係事務」(第11項)

この法律における「個人番号関係事務」は、第9条第3項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を利用して行う事務とするものである(第9条第3項の解説参照。)。

12 「個人番号利用事務実施者」(第12項)

この法律における「個人番号利用事務実施者」は、個人番号利用事務を処理する者及び個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受けた者とするものである。

13 「個人番号関係事務実施者」(第13項)

この法律における「個人番号関係事務実施者」は、個人番号関係事務を処理する者及び個人番号関係事務の全部又は一部の委託を受けた者とするものである。

14 「情報提供ネットワークシステム」(第14項)

この法律における「情報提供ネットワークシステム」は、行政機関の長等(行政機関の長、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)及び地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)並びに第19条第7号に規定する情報照会者及び情報提供者をいう。)の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、暗号その他その内容を容易に復元することができない通信の方法を用いて行われる第19条第7号の規定による特定個人情報の提供を管理するために、第21条第1項の規定に基づき総務大臣が設置し、及び管理するものとするものである。

15 「法人番号」(第15項)

この法律における「法人番号」は、第58条第1項又は第2項の規定により、特定の法人その他の団体を識別するための番号として指定されるものとするものである。

【第3条(基本理念)】

(基本理念)

第三条個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として、行われなければならない。

行政事務の処理において、個人又は法人その他の団体に関する情報の管理を一層効率化するとともに、当該事務の対象となる者を特定する簡易な手続を設けることによって、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資すること。

情報提供ネットワークシステムその他これに準ずる情報システムを利用して迅速かつ安全に情報の授受を行い、情報を共有することによって、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること。

個人又は法人その他の団体から提出された情報については、これと同一の内容の情報の提出を求めることを避け、国民の負担の軽減を図ること。

個人番号を用いて収集され、又は整理された個人情報が法令に定められた範囲を超えて利用され、又は漏えいすることがないよう、その管理の適正を確保すること。

個人番号及び法人番号の利用に関する施策の推進は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、行政運営の効率化を通じた国民の利便性の向上に資することを旨として、社会保障制度、税制及び災害対策に関する分野における利用の促進を図るとともに、他の行政分野及び行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮して行われなければならない。

個人番号の利用に関する施策の推進は、個人番号カードが第一項第一号に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、行政事務の処理における本人確認の簡易な手段としての個人番号カードの利用の促進を図るとともに、カード記録事項が不正な手段により収集されることがないよう配慮しつつ、行政事務以外の事務の処理において個人番号カードの活用が図られるように行われなければならない。

個人番号の利用に関する施策の推進は、情報提供ネットワークシステムが第一項第二号及び第三号に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、個人情報の保護に十分配慮しつつ、社会保障制度、税制、災害対策その他の行政分野において、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が迅速に特定個人情報の授受を行うための手段としての情報提供ネットワークシステムの利用の促進を図るとともに、これらの者が行う特定個人情報以外の情報の授受に情報提供ネットワークシステムの用途を拡大する可能性を考慮して行われなければならない。

本条は、社会保障・税番号制度の導入に当たっての基本理念を規定したものであり、第1条と相まって、制度の趣旨・目的を明らかにするものである。

社会保障・番号制度は、社会保障制度及び税制における給付と負担の適切な関係の維持や、申請、届出その他の行政手続の合理化、国民の利便性の向上に資するものであることから、可能な限りその利用が推進される必要がある。

また、社会保障・税番号制度は、まずは、社会保障、税、防災の各分野で運用を始めるものであるが、将来的には幅広い行政分野への拡大や官民連携も念頭に置きつつ構築するものである。将来的に個人番号の利用範囲を拡大する際の情報システム投資のコスト軽減、重複排除を図る観点から、制度構築に際しては、将来の拡張性を備えた弾力的な対応が可能となるようにする必要がある。


このため、社会保障・税番号制度の基本理念として、

@個人番号及び法人番号の利用の基本的考え方を定める(第1項)、

とともに、個人番号及び法人番号の利用に関する施策の推進に関して、

A幅広い行政分野における利用の拡大と将来的な行政分野以外の分野における利用の可能性を考慮して行うこと(第2項)、

B行政事務の処理における個人番号カードの利用の促進と行政事務以外の事務の処理における活用が図られるように行うこと(第3項)、

C社会保障制度、税制、災害対策等の行政分野における情報提供ネットワークシステムの利用の促進と将来的な同システムの用途の拡大の可能性を考慮して行うこと(第4項)、

を明らかにするものである。

1 第1項関係

個人番号及び法人番号の利用の基本的考え方を定めるものである。

具体的には、

@個人番号及び法人番号の個人・団体を識別する機能を活用し、行政事務を一層効率化するとともに、行政手続における簡易な本人確認の手続を設け、国民の利便性向上を図ること、

A個人番号の個人識別機能を活用し、所得情報など行政事務を処理する機関間で必要となる個人情報の授受を確実に行い、情報を共有することにより、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること、

BAによる情報の共有により、行政手続における所得証明などの添付書類の提出の求めを避け、国民の負担軽減を図ること、

C個人番号を用いて収集され、又は整理された個人情報が法令に定められた範囲を超えて利用され、又は漏えいすることがないよう、その管理の適正を確保すること、

を規定する。

2 第2項関係

社会保障・税番号制度は国民生活を支える社会的基盤を構築するものであり、国民生活への影響が大きいことから、社会保障制度、税制、災害対策の分野で個人番号を利用することとされているが、将来的には幅広い行政分野での活用や官民連携も念頭に置かれているものであり、これを明示するものである。

3 第3項関係

個人番号カードに関しては、行政手続における本人確認の簡易な手段としての利用の促進を図るとともに、カード記録事項が不正な手段により収集されることがないよう配慮しつつ、行政手続以外の手続における活用が図られるようにする旨を明記する。

これは、本人確認の手段としての個人番号カードの利用は、個人番号利用事務等実施者であるか否にかかわらずその有用性が認められることから、行政手続以外の事務処理にも活用されることが望ましいこと、また、これにより個人番号カードの一層の普及が期待されることを踏まえたものである。

なお、個人番号カードの活用については、第18条において具体化されている。

4 第4項関係

情報提供ネットワークシステムに関しては、個人情報の保護に十分配慮しつつ、国民の利便性の向上及び負担の軽減並びに行政運営の効率化に資するよう、まずは、社会保障制度、税制その他の行政分野における情報提供ネットワークシステムの利用の促進を図った上で、将来的に特定個人情報以外の情報の授受に情報提供ネットワークシステムの用途を拡大する可能性を考慮して行わなければならないことを明示する。

【第4条(国の責務)】

(国の責務)

第四条国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用を促進するための施策を実施するものとする。

国は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、個人番号及び法人番号の利用に関する国民の理解を深めるよう努めるものとする。

本条は、社会保障・税番号制度の導入に当たっての国の責務を明らかにするものである。

個人番号及び法人番号は、これにより社会保障制度及び税制における給付と負担の適切な関係の維持や、申請、届出その他の行政手続の合理化、国民の利便性の向上に資するものであることから、可能な限りその利用が推進される必要がある。

また、全ての国民に対して個人番号が交付され、国民一人ひとりが社会保障及び税の分野における申請・届出等の手続を行う際に、自らの個人番号を利用することとなるため、個人情報の保護を図りつつ制度の円滑な導入・定着を図るためには、国民一人ひとりが適切に個人番号を取り扱うよう、制度の周知徹底を行い、国民の深い理解を得ることが不可欠である。

このため、国の責務として、個人情報の保護の観点から個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講じつつ個人番号及び法人番号の利用を促進するための施策を実施すること、及び制度に対する国民の理解を深める観点から教育活動、広報活動等を実施することを規定するものである。

【第5条(地方公共団体の責務)】

(地方公共団体の責務)

第五条地方公共団体は、基本理念にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用に関し、国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を実施するものとする。

本条は、社会保障・番号制度の導入に当たっての地方公共団体の責務を明らかにするものである。

個人番号及び法人番号は、これにより社会保障制度及び税制における給付と負担の適切な関係の維持や、国及び地方公共団体に対する申請、届出その他の行政手続の合理化、国民の利便性の向上に資するものであることから、可能な限りその利用が推進される必要がある。

さらに、地方公共団体においては、地域の特性に応じて独自に社会保障政策を実施している例もあり、社会保障・税番号制度においては、条例による個人番号の利用(第9条第2項)など、地方公共団体による独自の取組が可能とされている。

このため、地方公共団体の責務として、個人情報の保護の観点から個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講じること、国との連携を図りつつ個人番号及び法人番号の利用に関し地域の特性に応じた施策を実施することを規定するものである。

【第6条(事業者の努力)】

(事業者の努力)

第六条個人番号及び法人番号を利用する事業者は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体が個人番号及び法人番号の利用に関し実施する施策に協力するよう努めるものとする。

社会保障・税番号制度においては、個人番号関係事務実施者として民間事業者が制度に関わることを想定している。

具体的には、行政事務の処理に関し、その処理に必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出等、個人番号を利用した事務を行うこととされた者(厚生年金・健康保険の被保険者の資格取得に関する届出を行う事業主や、給与の支払調書の提出を行う事業主など。)は、個人番号関係事務実施者として当該事務の実施に必要な範囲において他人の個人番号を利用することができるとされている(第9条第3項)。

また、当該者は一定の場合に契約に基づく金銭の支払のために必要な限度で個人番号を利用することができるとされているほか(同条第4項)、一定の要件を充足して特定個人情報の提供を受けた者についても、必要な範囲で個人番号を利用し、提供することができるものとされている(同条第5項、第19条第10号〜第14号)。さらに、これらの者から委託・再委託を受けた者についても、同様に個人番号を利用することが認められる。

また、健康保険組合など社会保障制度の実施を担う一部の者は、個人番号を利用して行政事務を処理することができる個人番号利用事務実施者として、別表第一及び第二に規定されている。

さらに、多くの事業者は第58条に基づき法人番号が付番されることとなる。

本条は、これらの個人番号の利用が直接的・間接的に認められる事業者や法人番号が付番される事業者に対し、社会保障・税番号制度の重要な関係者として、国又は地方公共団体が実施する施策に協力するよう努力義務を規定するものである。

【第2章 個人番号】

【第7条(指定及び通知)】

(指定及び通知)

第七条市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カード(氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他総務省令で定める事項が記載されたカードをいう。以下同じ。)により通知しなければならない。

市町村長は、当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)が備える住民基本台帳に記録されている者の個人番号が漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められるときは、政令で定めるところにより、その者の請求又は職権により、その者の従前の個人番号に代えて、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、速やかに、その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知しなければならない。

市町村長は、前二項の規定による通知をするときは、当該通知を受ける者が個人番号カードの交付を円滑に受けることができるよう、当該交付の手続に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

通知カードの交付を受けている者は、住民基本台帳法第二十二条第一項の規定による届出をする場合には、当該届出と同時に、当該通知カードを市町村長に提出しなければならない。この場合において、市町村長は、総務省令で定めるところにより、当該通知カードに係る記載事項の変更その他の総務省令で定める措置を講じなければならない。

前項の場合を除くほか、通知カードの交付を受けている者は、当該通知カードに係る記載事項に変更があったときは、その変更があった日から十四日以内に、その旨をその者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の長(以下「住所地市町村長」という。)に届け出るとともに、当該通知カードを提出しなければならない。この場合においては、同項後段の規定を準用する。

通知カードの交付を受けている者は、当該通知カードを紛失したときは、直ちに、その旨を住所地市町村長に届け出なければならない。

通知カードの交付を受けている者は、第十七条第一項の規定による個人番号カードの交付を受けようとする場合その他政令で定める場合には、政令で定めるところにより、当該通知カードを住所地市町村長に返納しなければならない。

前各項に定めるもののほか、通知カードの様式その他通知カードに関し必要な事項は、総務省令で定める。

本条は、個人番号の付番について規定するものである。

1 個人番号の付番の対象について

個人番号の付番の対象となる者は、行政事務の対象となる者であることに鑑み、住民基本台帳法第7条第13号の住民票コードが住民票に記載されている日本の国籍を有する者及び同法第30条の45の表の上欄に掲げる外国人住民(中長期在留者、特別永住者、一時庇護者及び仮滞在許可者、経過滞在者)とするものである。

2 第1項関係

(1)「市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により、住民票に住民票コードを記載したときは」

住民票コードから個人番号を生成する時期としては、個人に対して初めて住民票コードが指定されると同時に、速やかに行うことが合理的であると考えられる。

市町村長(特別区の区長を含む。)は、住民基本台帳法上、住民に関する正確な記録が行われるよう努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努める責務を負っており(住民基本台帳法第3条第1項)、住民に係る異動関係を最もよく把握している者である。

また、市町村長は、住民基本台帳法第30条の3第2項の規定により、新たに住民基本台帳に記録されるべき者について住民票の記載をする場合において、その者がいずれの市町村においても住民基本台帳に記載されたことがない者であるときは、その者に係る住民票に住民票コードを記載するものとされている。

以上のことを踏まえると、個人番号の付番に係る事務については、初めてその者の住民票コードを住民票に記載した市町村長が担うことが適当であると考えられ、当該市町村長が住民票にその者の住民票コードを記載したときを契機として、個人番号を付番することとするものである。

(2)「市町村長は、・・・その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知しなければならない」

個人番号については、住民に関する基礎的な情報となるものであるため、住民基本台帳法第7条に規定される住民票の記載事項とされている。

市町村長は、当該個人番号に対応する住民票コードが記載された住民票に係る住民の個人番号を、その者の住民票に記載した上で、その者に対して、当該個人番号を通知することとするものである。

(3)「速やかに」

個人番号については、本法により認められた事務を処理するために必要な範囲で各行政機関等において利用されるものであり、個人番号が付された後は、住民は各行政機関等との間の手続等において個人番号の提供を求められることとなる。そのため、市町村長は、個人番号を速やかに指定し、本人に通知することが必要となるものである。

(4)「通知カードにより」

社会保障・税番号制度導入後は、行政機関の窓口等で社会保障・税分野の手続等を行う者は自己の個人番号の提供を求められることとなる(第14条第1項)。また、なりすましによる被害を防ぐために、個人番号利用事務等実施者に対して、個人番号の提供を受ける際の本人確認義務を課している(第16条)。

本法では、個人番号の真正性の確認や本人確認の有効な手段として個人番号カードの交付を規定しているが、円滑な制度導入のためには、個人番号カードの交付を受けるまでの間であっても、個人番号の確認を容易に行うことができる手段を講じておく必要がある。

そこで、市町村長から本人に対する個人番号の通知を通知カードにより行うこととし、個人番号カードの交付を受けていない者が、行政機関の窓口等で個人番号の提供を求められた際に当該通知カードを利用できることとされている(第16条)。

3 第2項関係

本項においては、一定の要件に該当する場合に本人からの請求により個人番号の変更の請求を認めるとともに、職権による個人番号の変更もできることとするものである。

(1)「住民基本台帳に記録されている・・・者の請求」

個人番号は、住民基本台帳に新たに記録された者の住民票コードから生成され、当該住民基本台帳に記録された者に対して通知されるものであるため、個人番号の変更請求については、当該住民基本台帳に記録された者が行うこととしている。

(2)「職権により」

個人番号の盗用や流出などの事態を市町村長が探知した場合には早急な対応をとることが求められるが、本人からの変更請求を待っていたのでは対策が後手に回り、被害が拡大してしまう可能性もある。このような場合には、市町村長が本人からの変更請求を待つのではなく、職権により個人番号の変更を行うことができるようにする必要がある。

(3)「個人番号が漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められるとき」

漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合とは、例えば、個人番号利用事務や個人番号関係事務の際に本人から個人番号の提供を受けた者が、当該個人番号を本人以外の第三者の利益のために不正に利用する目的で漏えいした場合や個人番号が記載された個人番号カードが盗まれて当該個人番号カードが不正に利用される危険性がある場合、詐欺、暴力などで個人番号を他人に知られ、当該個人番号を不正な目的で使用される場合などが想定される。

(4)「通知カードにより」

個人番号の通知(第1項)と同様に、個人番号の変更の通知は通知カードにより行うこととするものである。

(5)「速やかに通知」

個人番号の通知(第1項)と同様に、変更後の個人番号についても、本人に対して速やかに通知することが必要である。

4 第3項関係

個人番号カードの取得促進の観点から、市町村長に対して個人番号カードの交付を円滑に受けるために必要な措置を講ずることを義務付けるものである。

具体的には、通知カードにより個人番号を本人に通知する際に、個人番号カードの交付申請書を同封することなどが想定される。

5 第4項関係

住民基本台帳法第22条第1項の規定による転入届を行う場合は、通知カードの記載事項である住所が変更される。通知カードは、他の本人確認書類と併用する形で本人確認の手段として扱われることから(第16条)、転入に伴う住所変更による記載事項の変更があった場合には、通知カードの記載事項の変更等の措置を行う必要があるため、転入届と同時に通知カードを市町村長に提出することとするものである。

6 第5項関係

第4項が転入届に伴う住所変更に対応するための規定であるのに対して、第5項はそれ以外の通知カードの記載事項の変更(例えば、同一市町村内での転居による住所変更、結婚・離婚・養子縁組・改名等による氏名変更など。)があった場合の規定である。

7 第6項関係

通知カードを紛失した場合には、紛失した通知カードを第三者に悪用されることを防ぐ観点から、その旨を市町村長に届け出なければならないとするものである。

8 第7項関係

個人番号カードの交付を受ける際に通知カードを返納しなければならないとするものである。

【第8条(個人番号とすべき番号の生成)】

(個人番号とすべき番号の生成)

第八条市町村長は、前条第一項又は第二項の規定により個人番号を指定するときは、あらかじめ機構に対し、当該指定しようとする者に係る住民票に記載された住民票コードを通知するとともに、個人番号とすべき番号の生成を求めるものとする。

機構は、前項の規定により市町村長から個人番号とすべき番号の生成を求められたときは、政令で定めるところにより、次項の規定により設置される電子情報処理組織を使用して、次に掲げる要件に該当する番号を生成し、速やかに、当該市町村長に対し、通知するものとする。

他のいずれの個人番号(前条第二項の従前の個人番号を含む。)とも異なること。

前項の住民票コードを変換して得られるものであること。

前号の住民票コードを復元することのできる規則性を備えるものでないこと。

機構は、前項の規定により個人番号とすべき番号を生成し、並びに当該番号の生成及び市町村長に対する通知について管理するための電子情報処理組織を設置するものとする。

本条は、市町村長が個人番号を指定するに当たり、その前段として機構において、当該個人番号の基となる個人番号とすべき番号を住民票コードから生成する仕組みについて規定するものである。

市町村が個人番号の付番事務を行うに当たっては、個人番号の重複付番を防止するとともに、付番の基となる住民票コード等の厳格な取扱いが求められる。

このため、専門的かつ豊富な経験を有し、かつ、独自の本人確認情報保護委員会の設置、秘密保持義務、罰則の適用など、その取り扱う情報の保護に関する厳格な措置を定めている住民基本台帳法上の指定情報処理機関である財団法人地方自治情報センターを改組して設立された機構(※)に対して、個人番号とすべき番号を生成する業務を担わせることとしている。

※ 機構は、住民基本台帳法に基づく指定情報処理機関である財団法人地方自治情報センターを基礎として、地方公共団体情報システム機構法に基づき設立された法人である(地方共同法人の形態で設置。)。

1 第1項関係

個人番号は、個人の住民票コードを変換して生成される番号を市町村長においてその者の個人番号として指定して初めてその者の個人番号となるが、個人番号の指定に当たっては、市町村長は、あらかじめ、機構に対して、住民票コードを通知し、当該住民票コードから個人番号とすべき番号を生成することを求めることとするものである。

2 第2項関係

本項は個人番号とすべき番号の生成を求められた機構の役割及び個人番号とすべき番号に求められる要件を規定するものである。

(1)機構において生成する番号に求められる要件について
イ)他のいずれの個人番号(前条第二項の従前の個人番号を含む。)とも異なること

個人番号は、特定の個人を識別するために用いられるものであり、重複のない唯一無二の番号とする必要がある。これを担保するため、市町村長が定める個人番号が、過去に定めた他の個人番号(個人番号を変更した場合の変更前の個人番号を含む。)のいずれとも異なるものであることを要件としている。

具体的には、機構が市町村長に対して、住民票コードを変換して個人番号とすべき番号を生成して通知する際に、機構において、過去に機構が通知したいずれの番号とも異なる番号を市町村長に通知することとされているものである。

ロ)前項の住民票コードを変換して得られるものであること

個人番号はその者の住民票コードを基に生成するものであるため(第2条第5項)、市町村長から通知された住民票コードを変換して生成した番号であることを要件としている。

ハ)前号の住民票コードを復元することのできる規則性を備えるものでないこと

住民票コードは、個人番号の基になるだけでなく、情報提供ネットワークシステムで利用する符号(情報照会者又は情報提供者が特定個人情報の授受を行う場合に個人番号に代わって特定個人情報の本人を識別するために用いるものをいう。以下同じ。)の基ともなるものである。そのため、住民票コードを復元する規則性を備えるものでないことを要件としている。

3 第3項関係

個人番号とすべき番号の生成、生成した番号の管理、市町村長に対する通知について電子情報処理組織を用いて管理することとし、そのための電子情報処理組織を機構において設置する旨を規定するものである。機構において電子情報処理組織を用いて適切に管理することで、個人番号の重複付番を防止し、効率的かつ安定的に個人番号とすべき番号の生成に係る業務を行うことが可能となる。

【第9条(利用範囲)】

(利用範囲)

第九条別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者(法令の規定により同表の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。第三項において同じ。)は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第四号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十八条若しくは第百九十七条第一項、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第五十九条第一項から第三項まで、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条、第二十九条第三項若しくは第九十八条第一項、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第九条の四の二第二項、第二十九条の二第五項若しくは第六項、第二十九条の三第四項若しくは第五項、第三十七条の十一の三第七項若しくは第三十七条の十四第九項、第十三項若しくは第十五項、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第五十七条第二項若しくは第二百二十五条から第二百二十八条の三の二まで、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第七条又は内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(平成九年法律第百十号)第四条第一項その他の法令又は条例の規定により、別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者又は地方公共団体の長その他の執行機関による第一項又は前項に規定する事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の他人の個人番号を利用した事務を行うものとされた者は、当該事務を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

前項の規定により個人番号を利用することができることとされている者のうち所得税法第二百二十五条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までに掲げる者は、激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条第一項に規定する激甚災害が発生したときその他これに準ずる場合として政令で定めるときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。

前各項に定めるもののほか、第十九条第十一号から第十四号までのいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けた者は、その提供を受けた目的を達成するために必要な限度で個人番号を利用することができる。

本条は、個人番号を利用することができる者及び利用することができる事務の種類を明らかにするとともに、当該事務処理に必要な限度においてのみ個人番号を利用することができることとするものである。

個人番号は、将来的には幅広い行政分野で利活用することも念頭に置きつつ、まずは、社会保障制度、税制、災害対策に関する分野において利用することとされている。また、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が効率的な情報の管理等を行うことができるように設けるものであり、まずは行政事務を想定することとされている。このため、個人番号を利用することができる主体としては、当該行政事務を実施する行政機関及び当該行政事務に関連する法律の規定により何らかの事務を行うことが想定されている者並びに当該行政事務に係る申請、届出等の各種手続を行う者が想定される。

また、主に個人番号の利用を想定している社会保障制度の分野では、特に多くの給付行政を市町村等の基礎自治体が担っているなど、地方公共団体での番号の活用により、国民の利便性の向上、基礎自治体の行政の効率的な運営が期待できることから、条例に基づいて実施している事業についても、地方公共団体が、地域の実情及び住民のニーズ等を踏まえ、必要な限度で個人番号を利用できることとされたものである。

さらに、平成23年3月11日に発生した東日本大震災での経験を踏まえ、大規模災害時に限った例外的な利用として、金融機関等が個人番号の利用範囲に係る事務に用いるためあらかじめ金融機関等が顧客から告知を受け、保有している個人番号について、大規模災害時に限り、保険金の支払や預金の払戻し等のために行う名寄せ等の事務に利用できることとされたものである。

1 第1項関係

本項は、別表第一の上欄に掲げる者(法令の規定により別表第一の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。)又はこれらの者から当該事務の全部又は一部の委託を受けた者は、当該事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる旨を規定するものである。

(1)「法令の規定により同表の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。」

行政事務については、その事務に係る権限を下級行政庁等に委任して実施している場合や当初から下級行政庁の権限として規定されている場合もある。

別表第1には、行政機関の長や地方公共団体の執行機関、すなわち本法の主体の基本的単位に該当するものを規定しつつ、実際に他の者が権限を委任され、又は当該者の下部組織の者が法律上根拠の主体となっている場合においても、これらの者が個人番号を利用することができるよう本項においてその旨を明記したものである。

(2)「当該事務の全部又は一部の委託を受けた者」

別表第一の下欄に掲げる事務の実施について別表第一の上欄に規定される行政機関等から委託を受けた受託者、その先の再委託、再々委託など全ての段階における受託者も番号を利用できるようにするものである。

(3)「必要な限度で」「利用」

「必要な限度」とは、「当該事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するため」に必要不可欠であることを指すもの、「利用」とは、行政機関における個人番号が記載された申請手続などの書類の受理、個人番号を用いた当該個人番号に係る者の情報の呼出し、情報の内部管理・保存、他の書類への個人番号の転記やデータの入力、各種行政相談等、個人番号を用いる行為を指すものである。

2 第2項関係

本項は、市町村等の基礎自治体の現場で個人番号を用いて手続を行うことができるようにし、また、個人情報を相互に授受することで、国民の利便性の向上、基礎自治体の行政の効率的な運営に寄与することを可能とするため、地方公共団体が地域の実情を踏まえて条例で定めて行う事務(乳幼児医療費の助成などの地方単独事業を想定。)に関して、個人番号を利用できる範囲を具体的に定めるものである。

(1)「福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるもの」

個人番号を利用することができる事務であって、国等の行政機関が行う事務については、本条第1項において別表第一に明記することとなるが、条例によって定められている事務については、法律において具体的に事務を特定することが困難であるため、別表第一への記載にはなじまない。

このため、本項において別途規定を設けることとするものであるが、無制限に個人番号の利用を認めることは、本法において事務の種類及び提供される個人情報の種類を法律上明記することにより個人番号の利用範囲を法律上明確にするとの趣旨に反するものであることから、一定の制約を課すことが適当である。

具体的には、今回の社会保障・税番号制度が、当面、社会保障・税及び防災の分野を中心としていることを踏まえ、地方公共団体において実施しているこれらと類似の事務についても同様に地方公共団体において個人番号を利用することができるよう「その他これに類する事務」であって条例で定めるものと規定されたものである。

3 第3項

行政事務については、個人番号を用いて本人を特定した上で申請、届出等の手続を行うこととなり、これを本人が行い得るのは当然であるが、法令又は条例の規定により、当該事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の個人番号を利用した事務を行う者が想定される。このため、これらの者について、個人番号を利用することができるようにするものである。

(1)「第1項又は前項に規定する事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の他人の個人番号を利用した事務」

具体的には、事業主が、その従業員の厚生年金・健康保険の被保険者の資格取得に関する届出を年金事務所・健康保険組合に対して行うことや、給与の支払調書を税務当局へ提出することなどが想定される。

なお、本項で規定する事務は、第1項又は第2項に規定する事務の処理に関して必要とされる事務であり、第1項又は第2項に規定された別表第一の上欄に掲げる者(法令の規定により全部又は一部を行うこととされている者も含む。)が実施する事務は含まない。

また、書面の提出以外に電子申請等も当然に含まれる。

4 第4項関係

本項は、個人番号の利用範囲として、大規模災害時に限った例外的な利用として、金融機関等が保険金の支払等の事務に利用できることとするものである。

(1)「前項の規定により個人番号を利用することができることとされている者のうち所得税法第二百二十五条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までに掲げる者」

本項は、東日本大震災の地震・津波の被害で預金通帳、キャッシュカード、保険証書、印鑑、本人確認書類などが紛失し、又は流出し、被災者の当座の生活資金及び生活再建資金となるはずの金融資産の引出しや保険金等の受領が必ずしも円滑に行われなかった経験を踏まえ、災害が発生した場合に限り、被災者の預金等の金融資産の引出しや生命保険、損害保険及びそれに類する共済の保険金等の支払を円滑に行うため、税務署に提出する支払調書に記載するため等の目的で預金取扱金融機関、証券会社、生命保険会社、損害保険会社、共済が保有する個人番号を顧客検索のキーとして利用することを認めるものである。

具体的には、あらかじめ金融機関等と契約を締結している契約者本人、又は、既契約に基づき金銭の支払を受けることの出来る者(死亡保険金の受取人等)が金融機関等の窓口において告知した個人番号を、金融機関等が、顧客データベースの検索キーとして用いることにより、当該顧客が保有する金融資産や保険契約等の状況を、より正確かつ迅速に把握することが可能となることから、より個々の顧客の事情に合った対応を行えると期待できる。

このため、本項の主体は「前項の規定により個人番号を利用することができることとされている者のうち所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十五条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号に掲げる者」と規定しており、具体的には、本条第3項に規定する個人番号の利用範囲に係る所得税法第二百二十五条に定める支払調書及び支払通知書の提出等の事務を行う者のうち、@第一号で銀行等の預金取扱金融機関、A第二号で証券会社、B第四号で生命保険会社、C第五号で損害保険会社、D第六号で生命保険会社又は損害保険会社と同様の業務を行う共済が、税務目的であらかじめ保有する個人番号を利用できる者となる。なお、各機関は、@預貯金等の払戻し、A預り有価証券の売却、B生命保険金・損害保険金等の支払、C共済金の支払、D契約者貸付(保険契約の解約返戻金の範囲内で保険会社が行う貸付等)などの、既契約を前提とした金銭の支払に係る業務に際し個人番号を利用することとなる。

(2)利用できる個人番号

客体である個人番号について特段の制限は設けられておらず、本項において金融機関等が利用できる個人番号は、本条第3項に規定する事務に利用するため入手したもののほか、例えば、所得税法第10条の規定により個人が金融機関の営業所等を経由して所轄税務署長に非課税貯蓄申告書を提出する場合など、本条第1項の「経由者」として入手した個人番号も含まれる。

(3)「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条第一項に規定する激甚災害が発生したとき」

激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号。以下「激甚災害法」という。)においては、激甚災害法第2条第1項の規定により政令で指定されたものが激甚災害法に規定する激甚災害となる。したがって、本項の適用は「災害が発生した時点」から可能になるものではなく、政令により激甚災害が指定された後に初めて適用が可能となるものである。

また、これに準ずる場合として政令で定めるときも同様とするものである。

4 第5項関係

第19条各号(特定個人情報の提供制限の例外)に基づき特定個人情報の提供を受ける者は、当然、個人番号の利用が可能とされている必要がある。このため、第19条各号により特定個人情報の提供を受ける者のうち、本条第4項までの規定に必ずしも含まれない者について本項に規定する。

具体的には、

@特定個人情報保護委員会からの情報提供の求め(第11号)については、特定個人情報保護委員会が、

A各議院の審査その他公益上の必要があるとき(第12号)については、各議院、裁判所等が、

B生命、身体又は財産の保護のため必要があり、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき(第13号)については、同号に基づき特定個人情報を提供する先が、

C特定個人情報保護委員会規則で定めるとき(第14号)については、同号に基づき特定個人情報を提供する先が、

それぞれ必ずしも個人番号利用事務実施者又は個人番号関係事務実施者ではないことから、これらの号について、本項に規定することとされたものである。

【第10条(再委託)】

(再委託)

第十条個人番号利用事務又は個人番号関係事務(以下「個人番号利用事務等」という。)の全部又は一部の委託を受けた者は、当該個人番号利用事務等の委託をした者の許諾を得た場合に限り、その全部又は一部の再委託をすることができる。

前項の規定により個人番号利用事務等の全部又は一部の再委託を受けた者は、個人番号利用事務等の全部又は一部の委託を受けた者とみなして、第二条第十二項及び第十三項、前条第一項から第三項まで並びに前項の規定を適用する。

行政機関や地方公共団体、民間事業者において業務の委託が広く行われている現状を踏まえれば、個人番号を取り扱う事務についても委託や再委託等がなされることが想定され、また、これまでの個人情報漏えい事故においては再々委託先等から情報が漏えいしている例もある。そこで、本条において個人番号利用事務等の委託、再委託等を認めるとともにその場合に許諾を要求するものである。

1 再委託時における許諾

委託を受けている個人番号利用事務又は個人番号関係事務(以下「個人番号利用事務等」という。)について再委託する場合、当該個人番号利用事務等の委託をした者(最初の委託者)の許諾を得なければならず、また、再委託以降の全ての段階における委託について同様とするものである。

再委託以降の全ての段階の委託について、個人番号利用事務等の委託をした者(最初の委託者)の許諾を必要とすることにより、個人番号の適正な取扱いが期待できないような委託先への再委託等を防止するとともに、最初の委託をする者に対しては、委託後の個人番号の取扱いについて、再委託等以降についても責任をもってその適正を確保することを要求することとなる。

2 担保措置

本条違反の行為については、特定個人情報保護委員会による勧告の対象となる。また、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は、是正命令の対象となり、この命令に反した場合には刑事罰の対象となる(第73条)。

【第11条(委託先の監督)】

(委託先の監督)

第十一条個人番号利用事務等の全部又は一部の委託をする者は、当該委託に係る個人番号利用事務等において取り扱う特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

1 受託者に対する監督義務

個人番号を委託した者に対し、委託に係る特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該委託を受けた者に対する監督義務を課すものである。再委託、再々委託など全ての段階における委託について同様である。

「必要かつ適切な監督」とは、例えば、委託契約の中に、秘密保持義務、事業所内からの特定個人情報の持出しの禁止、事務終了後の特定個人情報の返却又は廃棄の義務づけなどを設けること、これらの契約内容が遵守されていることについて定期的に報告を受けることなどが挙げられる。

2 担保措置

本条違反の行為については、特定個人情報保護委員会による勧告の対象となる。また、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は、是正命令の対象となり、この命令に反した場合には刑事罰の対象となる(第73条)。

【第12条(個人番号利用事務実施者等の責務)】

(個人番号利用事務実施者等の責務)

第十二条個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者(以下「個人番号利用事務等実施者」という。)は、個人番号の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人番号の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。

個人番号が漏えいした場合には、これを使ったデータマッチングにより個人の権利利益に対する甚大な被害を招く危険があり、また、滅失・き損した場合も個人番号を利用した効率的な行政サービスを受けるという国民の利便等が害されることとなる。そこで、個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者(以下「個人番号利用事務等実施者」という。)に対し、個人番号に関する安全確保の措置を義務づけるものである。

個人番号については、死者の個人番号を除き、個人情報保護法制における「個人情報」に含まれるため、個人情報保護法制における安全確保措置の対象となるので、本項の創設的効果は、個人情報保護法制の対象となっていない者における個人番号の安全確保措置のほか、死者の個人番号を安全確保措置の対象とすることである。

1 漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人番号の適切な管理のために必要な措置

保管庫の施錠、立入制限等の物理的保護措置、ネットワーク接続されているコンピュータへのファイアウォールの構築、情報の暗号化等の技術的保護措置、職員に対する教育・研修の実施、安全管理者の設置等管理体制の整備などの組織的保護措置等である。

2 担保措置について

本条違反の行為については、特定個人情報情報保護委員会による勧告の対象となる。また、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は是正命令の対象となり、この命令に反した場合には刑事罰の対象となる(第73条)。

【第13条(個人番号利用事務実施者等の責務)】

第十三条個人番号利用事務実施者は、本人又はその代理人及び個人番号関係事務実施者の負担の軽減並びに行政運営の効率化を図るため、同一の内容の情報が記載された書面の提出を複数の個人番号関係事務において重ねて求めることのないよう、相互に連携して情報の共有及びその適切な活用を図るように努めなければならない。

本条は、特定個人情報が本法の他の規定に基づき適切に取り扱われることにより個人の権利利益が保護されることを前提として、国民にとって利便性の高い社会の実現のために、個人番号利用事務実施者が、同一の内容の情報が記載された書面の提出を繰り返し求めたりすることなく、相互に連携して、特定個人情報を活用しなければならないとの努力義務を定めたものである。

具体的には、情報提供ネットワークシステムの活用等を通じて各機関間で特定個人情報を授受することで必要な情報を入手することなどが考えられる。

なお、本条に関連する規定として、第22条第2項の規定(情報提供ネットワークシステムを使用した特定個人情報の提供があった場合において、他の法令の規定により当該特定個人情報と同一の内容の情報を含む書面の提出が義務付けられているときは、当該書面の提出があったものとみなす旨を規定。)がある。

【第14条(提供の要求)】

(提供の要求)

第十四条個人番号利用事務等実施者は、個人番号利用事務等を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。

個人番号利用事務実施者(政令で定めるものに限る。第十九条第四号において同じ。)は、個人番号利用事務を処理するために必要があるときは、住民基本台帳法第三十条の九から第三十条の十二までの規定により、機構に対し機構保存本人確認情報(同法第三十条の九に規定する機構保存本人確認情報をいう。第十九条第四号及び第六十七条において同じ。)の提供を求めることができる。

個人番号利用事務を処理するために必要がある場合等には、個人番号の提供を求めることができることを規定するものである。

1 第1項関係

(1)「本人に対する個人番号の提供の求め」

個人番号利用事務等実施者が、申請・届出等を行う本人から直接個人番号の提供を求めることができることを規定している。

(2)「他の個人番号利用事務等実施者に対する個人番号の提供の求め」

個人番号利用事務等実施者は、他の個人番号利用事務等実施者が本人から提供を受けた個人番号について、当該個人番号利用事務等実施者から提供してもらうことができることを規定している。

例えば、国税庁長官(税務署)が、所得税の徴収に当たって、日本年金機構(公的年金等の源泉徴収票の提出義務者)が年金受給者本人から告知を受けた個人番号について、年金受給者の個人番号を付した公的年金等の源泉徴収票の日本年金機構からの提出により、当該年金受給者(公的年金等に係る所得税の納税義務者)の個人番号の提供を受けることなどを想定している。

この場合、日本年金機構は、年金の支給に係る事務を行う立場としては個人番号利用事務実施者である一方で、所得税の徴収に係る事務を行う個人番号利用事務実施者である国税庁長官に対して本人の個人番号を付した公的年金等の源泉徴収票を提出する立場としては個人番号関係事務実施者となる。

2 第2項関係

(1)「機構に対する機構保存本人確認情報の提供の求め」

個人番号利用事務実施者のうち政令で定める者は、その保有する個人に関する4情報(氏名、生年月日、性別、住所)を基に、その者の個人番号を機構に照会することができることを規定するものである。具体的には、改正後の住民基本台帳法第30条の9から第30条の12までの規定に基づき、同法第30条の9に規定する機構保存本人確認情報(氏名、生年月日、性別、住所、個人番号等が含まれる。)の提供を求めることができる。

個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務の処理に伴い、個人番号の確認を行うために機構に提供を求めることなどが想定されている。

【第15条(提供の求めの制限)】

(提供の求めの制限)

第十五条何人も、第十九条各号のいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けることができる場合を除き、他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者をいう。第二十条において同じ。)に対し、個人番号の提供を求めてはならない。

個人番号が、本法で定められている利用範囲を超えて利用された場合には、これがデータマッチングのキーとして不当に用いられることで個人の権利利益が侵害されるおそれがあるため、本法においては個人番号の提供を求めることができる場合を限定し(第14条)、また、特定個人情報の提供・収集・保管を原則禁止した上で一定の例外を規定している(第19条、第20条)。本条は、これらの規定により個人番号の提供を受けることができる場合を除いて個人番号の提供を求めることを禁止することにより、個人番号の保護を図るものである。

1 「個人番号の提供を求めてはならない」

「個人番号」には「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの」も含まれる(第2条第8項で本条において同様である旨規定している。)。したがって、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどしたものの提供を求めることも、対象となる。

2 「第19条各号のいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けることができる場合を除き」

第19条は特定個人情報の提供を原則禁止するとともに一定の場合に例外を認めている。例外として特定個人情報の提供が認められる場合には、逆に提供を受ける側にとっては、個人番号の提供を求めることができる場合であることから、提供が例外として許される場合を本条の例外とするものである。

3 「他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者をいう。)」

例えば、幼い子供の特定個人情報については、その親が保管することが想定されるところ、このような場合に、親が子供に対して特定個人情報の提供を求める行為が個人番号の告知に該当し得ることから、これを例外として除くものである。

4 担保措置について

本条違反の行為については、特定個人情報保護委員会による勧告の対象となる。また、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は是正命令の対象となり、この命令に反した場合には、刑事罰の対象となる(第73条)。

【第16条(本人確認の措置)】

(本人確認の措置)

第十六条 個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カード若しくは通知カード及び当該通知カードに記載された事項がその者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類の提示を受けること又はこれらに代わるべきその者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。

本条は、個人番号の提供を受ける際、その真正性の確認を行わないと、他人の個人番号を告知してなりすましを行う行為を防ぐことができなくなるため、その確認を義務付け、確認方法を規定している。具体的には、個人番号及びその者が個人番号で識別される本人であることを確認することができる手段として、

@個人番号カードの提示を受けること、

A通知カード及び主務省令で定める書類の提示を受けること、

の2つを原則的な本人確認のための手段として位置付けるとともに、やむを得ない事情でこれらによりがたい場合の代替的な本人確認の措置として、

B政令で定める措置、

についても認めることとしたものである。

1 「個人番号カード若しくは通知カード及び当該通知カードに記載された事項がその者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類の提示」

個人番号利用事務等実施者が第14条の規定により本人から個人番号の提供を受けるには、原則として

@個人番号カード又は

A通知カード及び通知カード記載事項がその者に係るものであることを証する書類

の提示を受けることが必要としている。

このうち、個人番号カードについては、その券面に個人番号のほか、氏名、住所、生年月日、性別、顔写真を記載することとしており、個人番号の告知を受ける際に、個人番号カードの提示を受け、氏名、住所、生年月日、性別、顔写真を確認することにより、個人番号の確認及び本人確認を行うことができる。

また、通知カードについては、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号を記載することとしているが、個人番号カードとは異なり本人の顔写真が記載されておらず、通知カード単独では本人確認手段としては十分ではない。そのため、通知カードを本人確認の手段として用いる場合には、通知カードと併せて通知カードの記載事項が本人に係るものであることを証する書類の提示を要することとしている。当該書類としては、例えば運転免許証、パスポート等の写真付きの身分証明書が考えられる。

【第3章 個人番号カード】

【第17条(個人番号カードの交付等)】

(個人番号カードの交付等)

第十七条市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者から通知カードの返納及び前条の主務省令で定める書類の提示を受け、又は同条の政令で定める措置をとらなければならない。

個人番号カードの交付を受けている者は、住民基本台帳法第二十四条の二第一項に規定する最初の転入届をする場合には、当該最初の転入届と同時に、当該個人番号カードを市町村長に提出しなければならない。

前項の規定により個人番号カードの提出を受けた市町村長は、当該個人番号カードについて、カード記録事項の変更その他当該個人番号カードの適切な利用を確保するために必要な措置を講じ、これを返還しなければならない。

第二項の場合を除くほか、個人番号カードの交付を受けている者は、カード記録事項に変更があったときは、その変更があった日から十四日以内に、その旨を住所地市町村長に届け出るとともに、当該個人番号カードを提出しなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。

個人番号カードの交付を受けている者は、当該個人番号カードを紛失したときは、直ちに、その旨を住所地市町村長に届け出なければならない。

個人番号カードは、その有効期間が満了した場合その他政令で定める場合には、その効力を失う。

個人番号カードの交付を受けている者は、当該個人番号カードの有効期間が満了した場合その他政令で定める場合には、政令で定めるところにより、当該個人番号カードを住所地市町村長に返納しなければならない。

前各項に定めるもののほか、個人番号カードの様式、個人番号カードの有効期間及び個人番号カードの再交付を受けようとする場合における手続その他個人番号カードに関し必要な事項は、総務省令で定める。

社会保障・税番号制度において本人確認の手段等として利用される個人番号カードの交付について規定するものである。

社会保障・税番号制度においては、個人番号が付番されたとしても、当該者がその個人番号に係る者であることを確認できなければ、きめ細やかな社会保障サービス等を本人に確実に届けることができない。また、個人番号だけで本人を確認することは、なりすまし等のリスクが存在することから禁止している。したがって、確かにその者であって(本人確認)、その者の個人番号である(個人番号確認)ことを確実に確認できるための媒体として、現在の情報技術を勘案して最も偽変造されにくい等、高いセキュリティを確保できる半導体集積回路(以下「ICチップ」という。)を搭載した個人番号カードを交付することを予定している。このことにより、個人番号利用事務等実施者が本人から個人番号の告知を受ける場合において、その者が本人であることを確認するとともに、個人番号が本人のものであることを確認することができることとなる。

また、社会保障・税番号制度においては、プライバシー保護の観点から、自己の特定個人情報についての行政機関等相互の情報の授受に関する記録について、インターネットを利用してオンラインにより自ら確認できる仕組み(情報提供等記録開示システム)を設けることとしている。

情報提供と記録開示システム上では、本人の個人情報が閲覧可能となることから、セキュリティを担保してオンラインによる本人確認を確実に行う必要があり、これに対応するため、情報提供等記録開示システムにログインする際には個人番号カードを本人確認の手段として利用することを予定している。

上述のとおり、個人番号カードは各種手続の際における個人番号の確認及び本人確認の手段として設けるものである。そのため、個人番号カードの券面に個人番号、氏名、住所、生年月日、性別及び顔写真を記載し、ICチップ内にこれらの情報を記録するとともに、情報提供等記録開示システムへのログイン等における電子的な本人確認を可能とするため、公的個人認証サービスの電子証明書を格納することを予定している。

なお、住民基本台帳法に基づく本人確認の手段として住民基本台帳カードが存在するところ、個人番号カードの交付が開始され始めた後は、住民基本台帳カードの新規発行はなくなり、個人番号カードがその役割を承継することとなるものである。

1 第1項関係

(1)「市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする」

市町村長は、住民基本台帳に記録した者に対して第7条に基づき個人番号を通知する事務を担うこととされていること、また、個人番号カードの交付の際には厳格な本人確認が必要であることから、個人番号カードの交付の事務について住所地市町村長が担うこととするものである。

(2)個人番号カードの券面記載事項について

個人番号利用事務等実施者が番号の告知を求める際に、本人確認をした上で個人番号を確認できるよう、個人番号カードの券面には、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項を記載し、顔写真を表示することとされている。

なお、個人番号カードの券面記載事項については、個人番号カードに組み込むICチップ内にも記録することが予定されている。

(3)個人番号カードの交付の際の通知カードの返納及び本人確認

市町村長は個人番号カードの交付の際に、通知カードの返納を受けることとするものである。

また、個人番号カードの利用拡大に伴い、より慎重な取扱いが必要となるため、なりすましによる不正取得防止の観点から、個人番号カードの交付に際しては、第16条の規定による本人確認の措置をとらなければならないことを明示するものである。

2 第2項関係

(1)「最初の転入届」

「最初の転入届」とは、個人番号カードの交付を受けている者が転出届をした場合において、当該転出届をした日後その者が最初に行う転入届をいう。個人番号カードの交付を受けている者が「甲市」から「乙市」、「乙市」から「丙市」に順に転出・転入し、「甲市」及び「乙市」に対し転出届をし、「乙市」及び「丙市」に対して転入届をする場合を想定すれば、「甲市」に対する転出届から見た場合の「乙市」に対する転入届をいうものである。

3 第3項関係

(1)「カード記録事項の変更」

個人番号カードは、住所をカード記録事項とすることを予定しているため、転入した住民が本人確認書類として個人番号カードを有効に継続利用できるようにするために、新たな住所を券面に記載する必要がある。

(2)「個人番号カードの適切な利用を確保するために必要な措置」

市町村において個人番号カードの適切な利用を確保するために必要な措置として、例えば、カードの偽変造対策のためにICチップ内の券面事項確認利用領域に記録された券面事項について、住所異動による券面記載の変更事項を書き換えることなどが想定される。

4 第4項関係

(1)「カード記録事項の変更」

本項における「カード記録事項の変更」がある場合としては、結婚・離婚等により氏名の変更があった場合や、同一市町村内での転居により住所の変更があった場合などである。

(2)「十四日以内に・・・届け出る」

住民基本台帳法における住民基本台帳カードの記載事項の変更があった場合の届出、転入の届出の届出期間が十四日以内とされており、特にこれを変更する理由がないことから、十四日以内とするものである。

(3)「個人番号カードを提出しなければならない。この場合においては前項の規定を準用する。」

カード記録事項の変更があった場合、個人番号カードのICチップ内に記録された券面事項について、書換えを行う必要があるため、個人番号カードを提出しなければならないとするものである。

5 第5項関係

個人番号カードを紛失した場合には、紛失した個人番号カードを第三者に悪用されることを防ぐ観点から、その旨を市町村長に届け出なければならないとするものである。

6 第6項関係

(1)「効力」

個人番号カードは各種手続の際における個人番号の確認及び本人確認の手段として導入するものであり、個人番号カードの券面には、個人番号、氏名、住所、性別及び生年月日を記載し、顔写真を表示することとしている。これらの個人番号カードの券面記載事項については、個人番号カードの有効期間が続く間は、カード発行者である市町村長が正しいものであると証明するのと同等の効力を有している。

また、個人番号カードは住民基本台帳カードの役割を承継するものであるところ、個人番号カードが有効に使用できる状態であれば、住民基本台帳法第24条の2第1項又は第2項の規定による特例としての転入届を行うことが可能となる。

なお、条例による個人番号カードの独自利用(第18条参照)については、個人番号カードが有効である間に限り利用できるものである。

【第18条(個人番号カードの利用)】

(個人番号カードの利用)

第十八条個人番号カードは、第十六条の規定による本人確認の措置において利用するほか、次の各号に掲げる者が、条例(第二号の場合にあっては、政令)で定めるところにより、個人番号カードのカード記録事項が記録された部分と区分された部分に、当該各号に定める事務を処理するために必要な事項を電磁的方法により記録して利用することができる。この場合において、これらの者は、カード記録事項の漏えい、滅失又は毀損の防止その他のカード記録事項の安全管理を図るため必要なものとして総務大臣が定める基準に従って個人番号カードを取り扱わなければならない。

市町村の機関 地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務

特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるもの 当該事務

個人番号カードについて、従来の住民基本台帳カードにおける条例による独自利用等における活用を可能とする。

これにより、個人番号カードの利便性が向上し、その普及促進が図られることと相まって、社会保障・税番号制度の更なる普及定着が期待されるものである。

1 「個人番号カードのカード記録事項が記録された部分と区分された部分に・・・電磁的方法により記録して利用できる。」

個人番号カードのICチップ内は、領域を区切って、領域ごとにアプリケーション(AP)を搭載することができる仕様にすることが予定されている。

個人番号カードのICチップ内には、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号、顔写真等のカード記録事項が記録され、カード記録事項が記録された領域には、権限のある者しかアクセスすることができない措置が講じられる(第2条第7項)。

本条による個人番号カードの利用は、ICチップ内のカード記録事項が記録されている領域等以外の空き領域を利用して、第1号又は第2号に掲げる者が各号に定める事務を処理するために必要な事項を電磁的方法により記録して利用することができることとするものである。

2 「カード記録事項の安全管理を図るために必要なものとして総務大臣が定める基準」

個人番号カードには個人番号を含む個人情報が記録されていることから、本条に基づく個人番号カードの利用に当たっては、個人番号カードの記録事項の安全管理を図るために必要なものとして総務大臣が定める基準に従って個人番号カードを取り扱わなければならないこととするものである。

3 市町村の機関による独自利用(第1号関係)

多くの市町村において、ICカードを用いた住民サービスを展開している状況を踏まえ、現行の住民基本台帳カードについては、条例で定めるところにより、そのICチップ内の空き領域を活用して、住民サービスのために独自の利用を行うことができることとされている。

これまで住民基本台帳カードを活用して実現してきた独自利用については、地域の実情、ニーズを踏まえつつ各市町村において積極的に取り組まれてきたものであり、個人番号カード導入後も引き続き継続して実施していく必要がある。

このため、市町村の機関において個人番号カードに組み込まれたICチップの空き領域を利用して独自利用を行えることとするものである。

4 行政機関、地方公共団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるものによる利用(第2号関係)

第1号が市町村の機関によるICカードの空き領域の利用であるのに対して、第2号はそれ以外の者による空き領域の利用を定めるものである。


【第4章 特定個人情報の提供】

第1節 特定個人情報の提供の制限等

【第19条(特定個人情報の提供の制限)】

(特定個人情報の提供の制限)

第十九条何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。

個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務を処理するために必要な限度で本人若しくはその代理人又は個人番号関係事務実施者に対し特定個人情報を提供するとき。

個人番号関係事務実施者が個人番号関係事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき(第十号に規定する場合を除く。)。

本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。

機構が第十四条第二項の規定により個人番号利用事務実施者に機構保存本人確認情報を提供するとき。

特定個人情報の取扱いの全部若しくは一部の委託又は合併その他の事由による事業の承継に伴い特定個人情報を提供するとき。

住民基本台帳法第三十条の六第一項の規定その他政令で定める同法の規定により特定個人情報を提供するとき。

別表第二の第一欄に掲げる者(法令の規定により同表の第二欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報照会者」という。)が、政令で定めるところにより、同表の第三欄に掲げる者(法令の規定により同表の第四欄に掲げる特定個人情報の利用又は提供に関する事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報提供者」という。)に対し、同表の第二欄に掲げる事務を処理するために必要な同表の第四欄に掲げる特定個人情報(情報提供者の保有する特定個人情報ファイルに記録されたものに限る。)の提供を求めた場合において、当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するとき。

国税庁長官が都道府県知事若しくは市町村長に又は都道府県知事若しくは市町村長が国税庁長官若しくは他の都道府県知事若しくは市町村長に、地方税法第四十六条第四項若しくは第五項、第四十八条第七項、第七十二条の五十八、第三百十七条又は第三百二十五条の規定その他政令で定める同法又は国税(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第一号に規定する国税をいう。以下同じ。)に関する法律の規定により国税又は地方税に関する特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。

地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき。

社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二条第五項に規定する振替機関等(以下この号において単に「振替機関等」という。)が同条第一項に規定する社債等(以下この号において単に「社債等」という。)の発行者(これに準ずる者として政令で定めるものを含む。)又は他の振替機関等に対し、これらの者の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、社債等の振替を行うための口座が記録されるものを利用して、同法又は同法に基づく命令の規定により、社債等の振替を行うための口座の開設を受ける者が第九条第三項に規定する書面(所得税法第二百二十五条第一項(第一号、第二号、第八号又は第十号から第十二号までに係る部分に限る。)の規定により税務署長に提出されるものに限る。)に記載されるべき個人番号として当該口座を開設する振替機関等に告知した個人番号を含む特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。

十一第五十二条第一項の規定により求められた特定個人情報を特定個人情報保護委員会に提供するとき。

十二各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百四条第一項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)若しくは議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第一条の規定により行う審査若しくは調査、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査又は会計検査院の検査(第五十三条において「各議院審査等」という。)が行われるとき、その他政令で定める公益上の必要があるとき。

十三人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき。

十四その他これらに準ずるものとして特定個人情報保護委員会規則で定めるとき。

1 特定個人情報の提供

(1)提供を制限される特定個人情報

特定個人情報の提供は、原則禁止される(第19条柱書)ところ、本条において提供を禁止される特定個人情報とは、

@個人番号をその内容に含む個人情報

A個人番号そのものを含まないものの、個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号を含む個人情報

とされている(第2条第8項)。

(2)提供を制限される符号

提供を制限される特定個人情報に(1)Aの場合を含めるのは、個人番号の成り代わり物と評価できるものを含む個人情報が提供された場合には、(1)@の個人番号を含む個人情報を提供した場合と同様であると考えられるためである。

なお、(1)Aの符号に該当するものとしては、具体的には、以下のものが想定される。

・情報提供ネットワークシステムを使用した情報提供等の際に用いられる符号

・個人番号に1を足したものなど個人番号を脱法的に変換したもの

ただし、住民票コードはその取扱いについて住民基本台帳法に基づき住民基本台帳制度において住民票に記載され使用されているものであり、本来的に「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる」ことを目的として住民票に記載されているものではないことから、上記符号には該当しない(第2条第8項)。

また、基礎年金番号や医療保険、介護保険、労働保険等の被保険者番号等、社会保障分野で用いる既存の記号番号も同様に該当しない。

2 提供が認められる場合

特定個人情報の提供が認められる場合は第1号から第14号までに掲げられる場合のみである。

(1)個人番号利用事務のための提供(第1号)

第1号は、個人番号利用事務の処理における提供の場面を規定するものである。この場合、提供元は、個人番号利用事務を処理するために特定個人情報を利用し、かつ当該事務を処理するために提供するものである。

具体的には、地方税の特別徴収のために、市区町村が給与支払者に対し特別徴収税額を通知する場合が挙げられる。この場合、市区町村は、地方税の徴収という個人番号利用事務を処理するために、個人番号関係事務を処理する給与支払者に対し特定個人情報を提供するが、給与支払者は個人番号利用事務を処理するためにかかる情報を利用するものではない。

(2)個人番号関係事務のための提供(第2号)

第2号は、個人番号関係事務の処理における提供の場面を規定するものである。この場合、提供先では提供を受けた特定個人情報を、個人番号利用事務又は個人番号関係事務を処理するために利用するものである。

具体的には、事業主が従業員の厚生年金被保険者資格取得に関する届出を年金事務所に提出する場合が挙げられる(「民@→民A→官(個人番号利用事務を処理する者)」で提供される場合の、「民@→民A」又は「民A→官」の場面である。)。

(3)機構による個人番号の提供(第4号)

第14条第2項において、政令で定める個人番号利用事務実施者は、本人から提示を受けた個人番号の真正性を確認するなどの個人番号利用事務を処理するため必要があるときは、機構に対しその者の個人番号を含む機構保存本人確認情報の提供を求めることができることとされており、これにより、機構から特定個人情報が提供される場面を規定するものである。

(4)住民基本台帳法上の本人確認情報等(第6号)

住民基本台帳法上の住民票及び本人確認情報は、個人番号を含むこととなり、住民票の写しの交付などにおいて特定個人情報の提供が行われることとなる。しかし住民票の写し及び本人確認情報の提供は同法の各種規制に服した上で提供されるものであることから、提供制限の例外として規定するものである。

(5)情報提供ネットワークシステム(第7号)

情報提供ネットワークシステムを利用して別表第二に規定された範囲で特定個人情報の提供を行う場合を規定するものである。

不正な情報提供がなされないよう、情報提供のパターンごとに、情報提供の求めができる機関(情報照会者)、情報提供の求めに応じて情報を提供することができる機関(情報提供者)、利用事務及び提供される特定個人情報を全て別表第二に限定列挙するものである。

(6)地方税法に基づく国税連携及び地方税連携(第8号)

地方税法又は国税に関する法律に基づく国税連携及び地方税連携は、社会保障・税番号制度導入以前から既に実施されているものであるが、かかる連携にさらに個人番号を付加することにより、国税・地方税間の情報を正確かつ効率的にやりとりすることができ、より正確な所得把握等の実現、より正確な行政が実現できるものと考えられ、特定個人情報を提供する必要性が認められる。

ただし、特定個人情報の漏えい等を防止するため、政令で定める安全確保措置を講じなければならないこととするものである。

(7)地方公共団体の機関間(第9号)

番号法においては、個人情報の取扱いが地方公共団体の機関単位となっているため、同一地方公共団体内部の他の機関で特定個人情報を利用することも、かかる他の機関への提供に該当することとなる。そこで、条例で定めた場合であれば、同一地方公共団体内部の他の機関間において(例:市長部局→市教育委員会)事務の処理に必要な限度で特定個人情報を提供するときは、第9号により、提供制限の例外に該当するものである。

(8)株式等振替制度を活用した個人番号の提供(第10号)

現在、株式の発行会社は、株式配当に係る支払調書に記載する株主の氏名、住所情報を、所得税法に基づき、株主から配当金支払の都度直接告知を受けることに代えて振替制度を活用して証券会社から入手している。社会保障・税番号制度の円滑な導入及び運用を図る観点から、株主の個人番号も振替制度を用いて入手できるよう規定するものである。

ただし、特定個人情報の漏えい等を防止するため、政令で定める安全確保措置を講じなければならないこととするものである。

(9)特定個人情報保護委員会からの情報提供の求め(第11号)

特定個人情報保護委員会は、特定個人情報の取扱いに関する監視監督のため、

資料の提出要求を行うことができるところ(第52条)、提出を求める資料として特定個人情報が含まれることが想定されるため、提供制限の例外として規定するものである。

(10)各議院審査等その他公益上の必要があるとき(第12号)

各議院による国政調査、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、犯則事件の調査、会計検査院の検査において、その調査等の対象たる資料中に特定個人情報が含まれる場合が想定される。例えば、個人番号を漏えいした本法違反の刑事事件において、漏えいに係る特定個人情報を証拠として裁判所に提出する場合などである。このような場合にも調査等を制限することなく行うため、提供制限の例外とするものである。

(11)生命、身体又は財産の保護のため必要があり、本人の同意があるか又は同意を得ることが困難である場合(第13号)

事故で意識不明の状態にある者に対する緊急の治療を行うに当たり、個人番号でその者を特定する場合など、緊急事態における特定個人情報の提供を認めるものである。

(12)特定個人情報保護委員会規則(第14号)

第13号までに掲げる場合のほか、特定個人情報保護委員会規則で定められたものについても、特定個人情報の第三者提供が行えるものである。具体的には、条例に基づき個人番号を利用している事務について、必要な限度で特定個人情報を提供する場合や、一度限りの特定個人情報の提供で別表第二や本条各号に規定する必要性が乏しい場合などが考えられる。

【第20条(収集等の制限)】

(収集等の制限)

第二十条何人も、前条各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)を収集し、又は保管してはならない。

1 主体

何人も対象となる。例えば、個人番号利用事務等実施者の職員等として個人番号利用事務等に携わる者が、その事務に必要な範囲を超えて、他に売り渡す目的で特定個人情報を収集、保管する場合が考えられる。また、個人番号利用事務等実施者の職員等でない者、例えば、店員が、身分確認書類として個人番号カードの提示を受けた場合において、写真等を確認して身分確認をするにとどまらず、そこに記載された個人番号を書き取り、収集・保管する場合も対象となる。

2 「前条各号のいずれかに該当する場合を除き」

第19条は特定個人情報の提供を原則禁止するとともに一定の場合に例外を認めることとしているところ、例外として特定個人情報について提供が認められる場合には、提供を受ける者にとっては、これを収集・保管することが必要であることが想定される。そこで、特定個人情報の提供が例外として許される場合については、収集等の制限についても例外とするものである。

3 「特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)」

本人が自身の特定個人情報を入手してこれを保管することは当然認められるべきであるため、対象を他人の個人番号を含む特定個人情報に限定している。

「他人」とは「自己と同一の世帯に属する者以外の者」である(第15条が本条において同様である旨規定している。)ことから、例えば、幼い子供の特定個人情報について、その親がこれを収集・保管することは認められる。

「個人番号」には「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」も含まれる(第2条第7項が本条において同様である旨規定している。)。したがって、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどした場合であっても、本条の規制の対象となる。

4 「収集し、又は保管してはならない」

「収集」とは集める意思をもって自己の占有に置くことをいう。人から取得する場合のほか、電子計算機等から取得する場合も含む。情報を閲覧することのみでは「収集」にあたらない。

「保管」とは、自己の勢力範囲内に保持することをいう。個人番号が記録された文書や電磁的記録を自宅に持ち帰り、置いておくことなどである。

5 担保措置について

国の機関の職員等が、職権を濫用して、本条に違反して特定個人情報を収集した場合には、刑事罰の対象となる(第71条)。

また、本条違反の行為については、特定個人情報保護委員会による勧告の対象となる。さらに、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は是正命令の対象となり、この命令に反した場合には、刑事罰の対象となる(第73条)。

第2節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供

【第21条(情報提供ネットワークシステム)】

(情報提供ネットワークシステム)

第二十一条総務大臣は、特定個人情報保護委員会と協議して、情報提供ネットワークシステムを設置し、及び管理するものとする。

総務大臣は、情報照会者から第十九条第七号の規定により特定個人情報の提供の求めがあったときは、次に掲げる場合を除き、政令で定めるところにより、情報提供ネットワークシステムを使用して、情報提供者に対して特定個人情報の提供の求めがあった旨を通知しなければならない。

情報照会者、情報提供者、情報照会者の処理する事務又は当該事務を処理するために必要な特定個人情報の項目が別表第二に掲げるものに該当しないとき。

当該特定個人情報が記録されることとなる情報照会者の保有する特定個人情報ファイル又は当該特定個人情報が記録されている情報提供者の保有する特定個人情報ファイルについて、第二十七条(第三項及び第五項を除く。)の規定に違反する事実があったと認めるとき。

1 情報提供ネットワークシステム(第1項)

社会保障・税番号制度は、社会保障・税等の分野の情報に個人番号を付し、これらの情報を適切、正確かつ効率的にやりとりすることで、きめ細かい社会保障給付やより正確な所得把握等の実現、より正確な行政を実現するためのものである。そのため、正確かつ迅速に情報提供ができるよう、また、不正な情報提供がなされないよう、情報提供ネットワークシステムを設置・管理し、適法な情報提供が迅速に行えるようにするものである。

2 提供の求めの通知(第2項)

不正な情報提供がなされないよう、@情報提供のパターンごとに、情報提供の求めができる機関(情報照会者)、情報提供の求めに応じて情報を提供することができる機関(情報提供者)、利用事務及び提供される特定個人情報を全て別表第二に規定することで、情報の提供ができる場合を法律に限定列挙している。

情報提供ネットワークシステムでは、このほかにも、A特定個人情報保護評価の規定を遵守していることを確認し、B提供の求め及び提供がなされた事実についての記録(情報提供等の記録)を逐一取得し、C秘密の漏えい防止その他の適切な管理を義務付け、安全かつ安定的な情報の授受を実現することとされている。

情報提供に際し、情報照会者及び情報提供者は、直接に情報提供の求めを行うのではなく、情報提供ネットワークシステムを介することを原則とする。

情報提供ネットワークシステムは、上記@番号法上許される情報提供であること、そして上記A特定個人情報保護評価の規定を遵守していることを確認した後でなければ、情報提供の求めがあった旨を、情報提供者に対して通知しないものとすることで、適法な情報提供を実現するものである。

【第22条(特定個人情報の提供)】

(特定個人情報の提供)

第二十二条情報提供者は、第十九条第七号の規定により特定個人情報の提供を求められた場合において、当該提供の求めについて前条第二項の規定による総務大臣からの通知を受けたときは、政令で定めるところにより、情報照会者に対し、当該特定個人情報を提供しなければならない。

前項の規定による特定個人情報の提供があった場合において、他の法令の規定により当該特定個人情報と同一の内容の情報を含む書面の提出が義務付けられているときは、当該書面の提出があったものとみなす。

1 提供義務(第1項)

第19条第7号に規定する特定個人情報の提供の必要性があり、かつ安全に情報提供されることが保障される状況でなされる特定個人情報の提供については、本法の趣旨にのっとり、特定個人情報を適切に活用するため、提供の求めを受けた情報提供者は情報を提供しなければならないこととするものである。

2 書面提出のみなし(第2項)

社会保障・税番号制度は、国民にとって利便性の高い社会を実現することもその目的とするものであるが、これは、各種行政手続における添付書類の削減などの行政手続の簡素化を含むものである。

そのため、本項では、第19条第7号に規定する特定個人情報の提供があった場合において、他の法令の規定により書面の提出が義務付けられているときは、当該書面の提出があったものとみなし、書面の提出義務を解除するものである。

【第23条(情報提供等の記録)】

(情報提供等の記録)

第二十三条情報照会者及び情報提供者は、第十九条第七号の規定により特定個人情報の提供の求め又は提供があったときは、次に掲げる事項を情報提供ネットワークシステムに接続されたその者の使用する電子計算機に記録し、当該記録を政令で定める期間保存しなければならない。

情報照会者及び情報提供者の名称

提供の求めの日時及び提供があったときはその日時

特定個人情報の項目

前三号に掲げるもののほか、総務省令で定める事項

前項に規定する事項のほか、情報照会者及び情報提供者は、当該特定個人情報の提供の求め又は提供の事実が次の各号のいずれかに該当する場合には、その旨を情報提供ネットワークシステムに接続されたその者の使用する電子計算機に記録し、当該記録を同項に規定する期間保存しなければならない。

第三十条第一項の規定により読み替えて適用する行政機関個人情報保護法第十四条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。

条例で定めるところにより地方公共団体又は地方独立行政法人が開示する義務を負わない個人情報に該当すると認めるとき。

第三十条第三項の規定により読み替えて適用する独立行政法人等個人情報保護法第十四条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。

第三十条第四項の規定により読み替えて準用する独立行政法人等個人情報保護法第十四条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。

総務大臣は、第十九条第七号の規定により特定個人情報の提供の求め又は提供があったときは、前二項に規定する事項を情報提供ネットワークシステムに記録し、当該記録を第一項に規定する期間保存しなければならない。

1 情報提供等の記録の保存(第1項)

情報照会者及び情報提供者並びに情報提供ネットワークシステムを所管する総務大臣について、情報提供の求め及び情報提供の記録を記録し、かつ保存しなければならない旨を規定したものである。

個人番号が付されることで、特定の個人の情報であることが極めて容易に識別できるようになるため、本来組み合わせて使用することが予定されていない情報同士を、個人番号で名寄せして結びつけることが可能になる。また、情報提供ネットワークシステムは、大量の特定個人情報をシステム上で半ば自動的にやりとりするものである。

一度流出した情報は回収が極めて困難であり、また、本来認められていない不正な情報提供がなされた場合、個人に対し重大な被害をもたらすことも予想され、不正な情報提供を抑止することが極めて重要である。

このため、誰と誰との間でどのような情報が提供されたのか、情報提供等の記録を情報照会者及び情報提供者並びに情報提供ネットワークシステムに記録・保存させることにより、問題が発生しても情報提供の記録を確認することを可能とするとともに、不正行為を抑止するものである。

2 不開示情報の保存(第2項)

提供される特定個人情報ではなく、情報提供等の記録自体が不開示情報に該当すると認められる場合があり得る。ただし、その場合でも、かかる情報提供等の記録に関する開示がなされないだけであり、情報提供等の記録中に不開示情報に該当する旨を記録し保存する義務がある旨を定めた規定である。

【第24条(秘密の管理)】

(秘密の管理)

第二十四条総務大臣並びに情報照会者及び情報提供者は、情報提供等事務(第十九条第七号の規定による特定個人情報の提供の求め又は提供に関する事務をいう。以下この条及び次条において同じ。)に関する秘密について、その漏えいの防止その他の適切な管理のために、情報提供ネットワークシステム並びに情報照会者及び情報提供者が情報提供等事務に使用する電子計算機の安全性及び信頼性を確保することその他の必要な措置を講じなければならない。

1 主体

情報提供ネットワークシステムの運営主体たる総務大臣、これを利用する情報提供者・情報照会者である。

2 情報提供等事務に関する秘密

例えば、情報提供ネットワークシステムを運営する機関の職員が行う、情報提供、照会に使う符号を管理する事務、情報提供、照会を稼働させるプログラムの作成、その点検、情報の授受の仲介、アクセス記録の確認などの事務や、情報提供者又は情報照会者の職員・従業者が行う、情報提供、照会に使う符号を管理する事務、情報の提供、情報の受領などの事務である。

「秘密」とは、一般に知られていない事実であること(非公知性)、他人に知られないことについて相当の利益があること(秘匿の必要性)を要件とする。

3 「漏えいの防止その他の適切な管理のために…必要な措置」

適切な管理のために必要な措置とは、物理的保護措置、技術的保護措置、組織的保護措置がある。物理的保護措置としては、保管庫の施錠、立入制限、防災設備の整備など、技術的保護措置としては、情報の暗号化など、組織的保護措置としては職員に対する教育、研修の実施、安全管理者の設置等管理体制の整備などが考えられる。

特に、政府機関を対象とした標的型攻撃が多数顕在化するなど複雑化・多様化するサイバー攻撃の脅威等、情報セキュリティを取り巻く状況を踏まえ、システムの安全性・信頼性を確保するための措置を徹底させるべく「情報提供ネットワークシステム並びに情報照会者及び情報提供者が情報提供等事務に使用する電子計算機の安全性及び信頼性を確保すること」が例示されているものである。

【第25条(秘密保持義務)】

(秘密保持義務)

第二十五条情報提供等事務又は情報提供ネットワークシステムの運営に関する事務に従事する者又は従事していた者は、その業務に関して知り得た当該事務に関する秘密を漏らし、又は盗用してはならない。

1 主体

情報提供ネットワークシステムを運営する機関の職員、これを利用する情報照会者及び情報提供者の役員、職員、従業者、これらの機関に派遣されている派遣労働者、更に、これらの機関から委託を受けた受託者及び再受託者やその従業者・派遣労働者が含まれる。過去に当該事務に従事していた者による漏えいも防止する必要があるため、「従事していた者」も対象とするものである。

2 「業務に関して知り得た当該事務に関する秘密を漏らし、又は盗用してはならない」

情報提供ネットワークシステムを運営する機関の職員等については、情報照会、情報提供の際に用いる符号、システムの機器構成・設定、暗号及び複号に必要な鍵情報等を漏らし又は盗用すること、情報照会者・情報提供者の職員等については、符号、暗号及び複号に必要な鍵情報等を漏らし又は盗用することなどが、本条の対象と想定される。

3 罰則

本条に違反して秘密を漏らし、又は盗用する行為は罰則の対象となる(第69条)。


【第5章 特定個人情報の保護】

第1節 特定個人情報保護評価

【第26条(特定個人情報ファイルを保有しようとする者に対する指針)】

(特定個人情報ファイルを保有しようとする者に対する指針)

第二十六条特定個人情報保護委員会は、特定個人情報の適正な取扱いを確保するため、特定個人情報ファイルを保有しようとする者が、特定個人情報の漏えいその他の事態の発生の危険性及び影響に関する評価(以下「特定個人情報保護評価」という。)を自ら実施し、これらの事態の発生を抑止することその他特定個人情報を適切に管理するために講ずべき措置を定めた指針(次項及び次条第三項において単に「指針」という。)を作成し、公表するものとする。

特定個人情報保護委員会は、個人情報の保護に関する技術の進歩及び国際的動向を踏まえ、少なくとも三年ごとに指針について再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

1 第1項

社会保障・税番号制度の導入に伴い、国家により個人の様々な個人情報が一元管理されるのではないか、特定個人情報が不正に追跡・突合されるのではないか、財産その他の被害が発生するのではないか、といった懸念が生じることが考えられる。

これらの懸念を踏まえ、国民の特定個人情報が適切に取り扱われるよう、本法において様々な保護措置が規定されているところである。中でも、第27条においては、特定個人情報ファイルの保有が個人のプライバシー等の権利利益に対してどのような影響を与え、そのような影響を軽減するためにどのような措置をとるべきか評価する特定個人情報保護評価制度を規定しているところである。

本項においては、特定個人情報保護評価制度を導入するに当たって、統一的な基準を設け、各実施者によって評価の深度にばらつきを設けず、統一的・効率的・実効的な評価制度とするために、特定個人情報保護委員会が特定個人情報保護評価指針を作成及び公表することとするものである。

2 第2項

特定個人情報保護評価(以下「情報保護評価」という。)は、プライバシー等に対する影響やリスクについて事前に分析を行い、かかる影響やリスクを軽減するための合理的措置を事前に講じる制度であるが、プライバシーは、社会の変容により変化し得る概念である。また、プライバシーを保護するための技術も日進月歩で進化することが予想され、プライバシー保護のための技術が向上すれば、プライバシーへの影響を抑止するための措置も大きく変わることが予想される。

また、特定個人情報保護委員会が情報保護評価を実施していくに当たって、諸外国のプライバシー影響評価を踏まえ、国際的レベルの評価を行っていくことで、日本の政府や企業における個人情報保護について国際的信頼を獲得することができるものと考えられる。

このようなことから、情報保護評価の制度の重要な基礎となる情報保護評価のための指針について、必要な見直しを行うこととするものである。

【第27条(特定個人情報保護評価)】

(特定個人情報保護評価)

第二十七条行政機関の長等は、特定個人情報ファイル(専ら当該行政機関の長等の職員又は職員であった者の人事、給与又は福利厚生に関する事項を記録するものその他の特定個人情報保護委員会規則で定めるものを除く。以下この条において同じ。)を保有しようとするときは、当該特定個人情報ファイルを保有する前に、特定個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を評価した結果を記載した書面(以下この条において「評価書」という。)を公示し、広く国民の意見を求めるものとする。当該特定個人情報ファイルについて、特定個人情報保護委員会規則で定める重要な変更を加えようとするときも、同様とする。

特定個人情報ファイルを取り扱う事務に従事する者の数

特定個人情報ファイルに記録されることとなる特定個人情報の量

行政機関の長等における過去の個人情報ファイルの取扱いの状況

特定個人情報ファイルを取り扱う事務の概要

特定個人情報ファイルを取り扱うために使用する電子情報処理組織の仕組み及び電子計算機処理等(電子計算機処理(電子計算機を使用して行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修正、更新、検索、消去、出力又はこれらに類する処理をいう。)その他これに伴う政令で定める措置をいう。)の方式

特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報を保護するための措置

前各号に掲げるもののほか、特定個人情報保護委員会規則で定める事項

前項前段の場合において、行政機関の長等は、特定個人情報保護委員会規則で定めるところにより、同項前段の規定により得られた意見を十分考慮した上で評価書に必要な見直しを行った後に、当該評価書に記載された特定個人情報ファイルの取扱いについて特定個人情報保護委員会の承認を受けるものとする。当該特定個人情報ファイルについて、特定個人情報保護委員会規則で定める重要な変更を加えようとするときも、同様とする。

特定個人情報保護委員会は、評価書の内容、第五十二条第一項の規定により得た情報その他の情報から判断して、当該評価書に記載された特定個人情報ファイルの取扱いが指針に適合していると認められる場合でなければ、前項の承認をしてはならない。

行政機関の長等は、第二項の規定により評価書について承認を受けたときは、速やかに当該評価書を公表するものとする。

前項の規定により評価書が公表されたときは、第二十九条第一項の規定により読み替えて適用する行政機関個人情報保護法第十条第一項の規定による通知があったものとみなす。

行政機関の長等は、評価書の公表を行っていない特定個人情報ファイルに記録された情報を第十九条第七号の規定により提供し、又は当該特定個人情報ファイルに記録されることとなる情報の提供を同号の規定により求めてはならない。

本条は、特定個人情報ファイルが取り扱われる前に、個人のプライバシー等に与える影響を予測・評価し、かかる影響を軽減する措置をあらかじめ講じるために実施する情報保護評価について規定するものである。

我が国においては、個人や社会に対し重大な影響を与える可能性のあるものについて、その実施前に評価を行い、かかる影響を予測し、悪影響を回避・軽減する措置を講じている例がある。

たとえば、環境影響評価は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業について、その実施前に環境影響評価を行うことで、環境の保全について適正な配慮がなされることを確保することを目的としている(環境影響評価法第1条)。

また政策評価は、@研究開発、A公共事業、B政府開発援助、C規制の新設・改廃、D租税特別措置等について、事前評価を実施し(行政機関が行う政策の評価に関する法律第9条)、効果的かつ効率的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされることを目的としている(同法第1条)。

また諸外国では、上記の環境影響評価(Environmental Impact Assessment)、規制事前評価(Regulatory Impact Assessment / Regulatory Impact Analysis)同様、プライバシーについても事前に評価を行い、悪影響を回避・軽減する措置として、プライバシー影響評価(Privacy Impact Assessment)やデータ保護評価(Data Protection Impact Assessment)を行っている例がある。

1 対象者(「行政機関の長等」第2条第14項参照)

行政機関の長、地方公共団体の機関、独立行政法人等及び地方独立行政法人については、その公的性格に鑑み、国民のプライバシー保護にどのように取り組んでいるかについて、各機関自身が宣言し、国民の信頼を獲得することが求められる。

また機構については、個人番号とすべき番号を生成するという、社会保障・税番号制度における職務の重大性に鑑み、国民のプライバシー保護にどのように取り組んでいるかについて、自ら宣言し、国民の信頼を獲得することが求められ、また、積極的な事前対応が求められる。

民間事業者は、主に、個人番号関係事務を処理するために個人番号を取り扱うことが想定され、事業目的で個人番号を利用するものではないと考えられる。そのため全ての民間事業者について特定個人情報保護評価を義務づけることは適当ではない。しかし、個人番号利用事務実施者としての民間事業者が情報提供ネットワークシステムを利用する場合には、制度への関与の程度が深く、特定個人情報ファイルの保有が本人に対して与える影響も大きいものと考えられる。また、かかる民間事業者は、公的性格の強い事業者が予定されているため、その性格からも、国民のプライバシー保護への取組について宣言し、国民の信頼を獲得することが求められると考えられる。

2 実施時期(「特定個人情報ファイルを保有しようとするとき」)

特定個人情報ファイルは、検索可能となるように体系的に構成された情報であり、その適正な取扱いが担保されなければ、個人のプライバシーに与える影響及びリスクが大きいものと考えられるため、特定個人情報ファイルを保有しようとするときに特定個人情報保護評価を実施するものである。

また、特定個人情報保護評価は、事後的対応にとどまらない積極的な事前対応を行う目的で実施するものであるため、特定個人情報ファイルを保有しようとする前に、実施しなければならないものとされている。

【第28条(特定個人情報ファイルの作成の制限)】

(特定個人情報ファイルの作成の制限)

第二十八条個人番号利用事務等実施者その他個人番号利用事務等に従事する者は、第十九条第十一号から第十四号までのいずれかに該当して特定個人情報を提供し、又はその提供を受けることができる場合を除き、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて特定個人情報ファイルを作成してはならない。

1 主体

個人番号利用事務等実施者その他個人番号利用事務等に従事する者である。本法に基づいて個人番号を取り扱うことができるこれらの者においては、個人番号を取り扱うことを許された範囲を超えて特定個人情報ファイルを作成することが可能な立場にあるところ、許された範囲を超えて特定個人情報ファイルが作成された場合には個人の権利利益を侵害する危険が高いため、これを禁ずるものである。

特定個人情報ファイルを扱い得る立場にある者がその立場を悪用する行為を規制するものであるから、個人番号利用事務等実施者の職員等であってもそのような立場にない者は主体とならない。もっとも、本条の主体として掲げられている者以外の者が特定個人情報ファイルを作成する行為については、その前提行為である個人番号の収集、保管行為が第20条(収集等の制限)違反となり得る。

2 個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲

本法の規定により個人番号を利用できる個人番号利用事務等実施者の職員等が、当該事務の処理として特定個人情報ファイルを作成する場合である。例えば、法定調書提出義務者である事業者が、税務署に法定調書を提出するための事務に利用するべく、従業者の個人番号を含む特定個人情報ファイルを作成する場合が挙げられる。

3「第19条第11号から第14号までのいずれかに該当して特定個人情報を提供し、又はその提供を受けることができる場合を除き」

第19条は特定個人情報の提供を原則禁止するとともに一定の場合に例外を認めることとしている。この例外のうち、第11号から第14号までに該当する場合には、特定個人情報ファイルを作成する必要性が認められる場合がありかつそうすることによる権利利益の侵害のおそれも考えにくいため、本条の例外とするものである。

4 特定個人情報ファイルの範囲

「個人番号」に代えて「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」を含む特定個人情報ファイルも含まれる(第2条第8項、第9項。)。したがって、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどした場合であっても、本条の規制の対象となる。

5 担保措置

本条違反の行為については、特定個人情報保護委員会による勧告の対象となる。また、勧告に従わなかった場合又は勧告がなされていなくても緊急に措置をとる必要がある場合は是正命令の対象となり、命令に反した場合は刑事罰の対象となる(第73条)。


第2節 行政機関個人情報保護法等の特例等

【第29条(行政機関個人情報保護法等の特例)】

(行政機関個人情報保護法等の特例)

第二十九条行政機関が保有し、又は保有しようとする特定個人情報(第二十三条に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、行政機関個人情報保護法第八条第二項第二号から第四号まで及び第二十五条の規定は適用しないものとし、行政機関個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる行政機関個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

独立行政法人等が保有する特定個人情報(第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、独立行政法人等個人情報保護法第九条第二項第二号から第四号まで及び第二十五条の規定は適用しないものとし、独立行政法人等個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる独立行政法人等個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

個人情報保護法第二条第三項に規定する個人情報取扱事業者が保有する特定個人情報(第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、個人情報保護法第十六条第三項第三号及び第四号並びに第二十三条の規定は適用しないものとし、個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

我が国の個人情報保護法制は、個人情報を保有する対象ごとに、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の三法(以下「一般法三法」という。)が存在する。個人番号も特定個人情報も、一般法三法にいう「個人情報」に該当するため、特定個人情報を、行政機関個人情報保護法にいう行政機関が保有した場合においては同法が、独立行政法人等個人情報保護法にいう独立行政法人等が保有した場合においては同法が、個人情報保護法にいう個人情報取扱事業者が保有した場合においては同法がそれぞれ適用されることとなる(なお、そのほか、各条例において規定されている者や、国の機関のうち行政機関を除いた者(国会又は裁判所)が特定個人情報を保有した場合においては、それぞれ各条例や、国会又は裁判所における内部規則等が適用されることとなる。)。そこで、本条においては、特定個人情報に関して、原則は一般法三法が適用されるものであるが、その一部の規定については読み替えて適用し、さらに一部の規定については適用を除外することとするものである。

また、本法は、特定個人情報保護の観点から、一般法三法の読替え等のほかに、@一般法三法の対象となっていない者に対する対応、A一般法三法の規制を超えた本法独自の規制に関する規定も設けることとしている。@に関しては、特定個人情報の保護の必要性と地方自治の重要性への配慮の調和の観点から、第31条において、地方公共団体に対し、本条における読替えの趣旨等を踏まえた措置を講ずるよう求めることとしている。また、個人情報保護法は、一定の要件を満たす事業者のみを対象としているが、特定個人情報においては、同法の適用対象外とされた事業者に対しても最低限の規制は及ぼす必要があると考えられることから、個人情報保護法における一部の規制と同様の規制(本条で読み替えられたものと同内容。)を第32条から第35条までで定めている。他方、国の機関のうち行政機関を除く機関、すなわち国会及び裁判所については、三権分立の原則への配慮から、それぞれの内部規律による対応に委ねることとし、特段の規定を置いていない。

また、Aについては、本法において、提供の求めの制限や委託時の規制など規制の強化、特定個人情報保護評価制度の新設、特定個人情報保護委員会による監視・監督、罰則の強化などの方策を講じることとしているものである。

1 行政機関個人情報保護法及び独立行政法人個人情報保護法の読替え・適用除外(第1項・第2項)

(1)利用及び提供の制限(行政機関個人情報保護法第8条・独立行政法人等個人情報保護法第9条の読替え・適用除外)

本法は第19条において特定個人情報の提供禁止及び例外を規定していることから、一般法三法のうち、第三者提供について規定した部分を適用しないよう読み替えて適用するものである。また、一般法三法は、法令に基づく場合、本人の同意がある場合などを目的外利用の禁止の例外としているが、特定個人情報の要保護性に照らし、本条において、生命等保護のため必要な場合及び独立行政法人等について第9条第4項に規定する激甚災害の場合等に限定するものである。

(2)個人情報ファイルの保有等に関する事前通知先(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の読替え)

行政機関個人情報保護法上は、総務大臣へ事前通知をするものと規定されているが、特定個人情報の取扱い全般について監視・監督する強力な権限を有する特定個人情報保護委員会が設置されることから、事前通知先を同委員会とするものである。

(3)開示請求、訂正請求及び利用停止請求について任意代理も認めること(行政機関個人情報保護法第12条第2項、第13条第2項、第14条第1号、第27条第2項、第28条第2項、第36条第2項及び第37条第2項、並びに独立行政法人等個人情報保護法第12条第2項、第13条第2項、第14条第1号、第27条第2項、第28条第2項、第36条第2項及び第37条第2項の読替え)

行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法では、任意代理が認められていない。しかし、社会保障・税番号制度においては、情報提供ネットワークシステムの導入に伴い不正な情報提供等がなされる懸念があり得ることから、開示請求、訂正請求及び利用停止請求といった本人参加の権利の実質的な保障が重要である。

このため、これらの権利が容易に行使できるよう、情報提供等記録開示システムを整備して情報提供等の記録の開示等を容易に行えるようにするとともに、インターネット接続が困難で、かつ書面請求も困難な者についても容易に開示請求権等を行使できるよう、任意代理を認める必要がある。

また、個人番号が利用される社会保障・税分野の手続は、専門家である税理士や社労士などの代理人に手続を委任するニーズが高いことから、開示請求等についても税理士などの任意代理人を認めることが国民の利便性向上に資する。そこで、本条において任意代理を認めるものである。

(4)他の法令による開示の実施との調整(行政機関個人情報保護法第25条及び独立行政法人等個人情報保護法第25条の適用除外)

行政機関個人情報保護法等は、他の法令で保有個人情報の開示が定められていて、かつその開示の方法が行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の方法と同一である場合には、行政機関個人情報保護法等に基づく開示を行わないこととしている。

しかし、情報提供等記録開示システムでは、特定個人情報を自動的に開示する仕組みを予定しており、請求の方法も開示の方法も電磁的方法であり、かつ開示までに要する時間も極めて短時間となることを想定している。そのため他の法令による開示よりも、情報提供等記録開示システムでの開示の方が利便性が高いものと考えられることなどから、上記規定を適用除外とするものである。

(5)開示の手数料の減額・免除(行政機関個人情報保護法第26条第2項及び独立行政法人等個人情報保護法第26条第2項の読み替え)

行政機関個人情報保護法等は、開示請求者が実費の範囲内の請求手数料を納めなければならない旨を規定している。しかし、個人番号は国民全員に付番されるものであり、個人番号が付された自己の個人情報が不正に転々流通したり不正な取扱いがなされてないかとの国民の危惧に対応するためには、個人の経済的事情によらずに、個人自ら特定個人情報を容易に確認できるようにすることが重要である。

また、特定個人情報は、不正確な場合に個人に与える影響が大きく、この点からも本人が自己の特定個人情報の正確性を確認しやすくすることが求められる。そこで、本法においても、行政機関の保有する情報の公開に関する法律等に倣い、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、手数料を減額し、又は免除することができることとするものである。

(6)利用停止請求(行政機関個人情報保護法第36条第1項及び独立行政法人等個人情報保護法第36条第1項の読替え)

行政機関個人情報保護等は利用停止を請求することができる場合を列挙しているところ、本法の規定に違反した不適正な取扱いがなされている場合にも利用停止請求を行えるようにすべき場合があるため、本条において、利用停止請求できる場合を追加するものである。

また、標記条項においては、行政機関個人情報保護法第8条、独立行政法人等個人情報保護法第9条に違反した場合には利用停止請求を行うことができることされているが、(1)のとおり、これらの条項中提供制限の規定は除外するように読み替えて適用することとするものである。

2 個人情報保護法の読替え

(1)利用目的による制限・第三者提供の制限(個人情報保護法第16条の読替え、第23条の適用除外)

第19条において特定個人情報の提供禁止及び例外を規定していることから、第三者提供について規定した個人情報保護法第23条を適用除外としている。また、同法第16条は、目的外利用の禁止について、法令に基づく場合、本人の同意がある場合などを例外としているが、特定個人情報の要保護性に照らし、例外を、生命等保護のため必要な場合、第9条第4項に規定する激甚災害の場合に限定している。

(2)利用停止(個人情報保護法第27条第2項の読替え)

個人情報保護法第27条第2項においては、同法第23条第1項に違反した場合には利用停止請求を行うことができることされているが、(1)のとおり第23条は適用除外とするものである。

【第30条(情報提供等の記録についての特例)】

(情報提供等の記録についての特例)

第三十条行政機関が保有し、又は保有しようとする第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報に関しては、行政機関個人情報保護法第八条第二項から第四項まで、第九条、第二十一条、第二十二条、第二十五条、第三十三条、第三十四条及び第四章第三節の規定は適用しないものとし、行政機関個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる行政機関個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

総務省が保有し、又は保有しようとする第二十三条第三項に規定する記録に記録された特定個人情報に関しては、行政機関個人情報保護法第八条第二項から第四項まで、第九条、第二十一条、第二十二条、第二十五条、第三十三条、第三十四条及び第四章第三節の規定は適用しないものとし、行政機関個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる行政機関個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

独立行政法人等が保有する第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報に関しては、独立行政法人等個人情報保護法第九条第二項から第四項まで、第十条、第二十一条、第二十二条、第二十五条、第三十三条、第三十四条及び第四章第三節の規定は適用しないものとし、独立行政法人等個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる独立行政法人等個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

(略)

独立行政法人等個人情報保護法第三条、第五条から第九条第一項まで、第十二条から第二十条まで、第二十三条、第二十四条、第二十六条から第三十二条まで、第三十五条及び第四十六条第一項の規定は、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等及び地方独立行政法人以外の者が保有する第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる独立行政法人等個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

(略)

1 主体

(1)総論

本条は、@行政機関の長が情報提供等の記録を保有する際の行政機関個人情報保護法の読替え(第1項)、A総務省が情報提供ネットワークシステム上の情報提供等の記録を保有する際の行政機関個人情報保護法の読替え(第2項)、B独立行政法人等が情報提供等の記録を保有する際の独立行政法人等個人情報保護法の読替え(第3項)、C行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者が情報提供等の記録を保有する際の独立行政法人等個人情報保護法の準用(第4項)について定めたものである。

(2)地方公共団体・地方独立行政法人

地方公共団体については、地方自治との関係から、本法において情報提供等の記録の取扱いを定めるのではなく、本法の趣旨を踏まえて、それぞれの判断で措置を講ずることを求めるものとされている(第31条)。

(3)行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者

行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者が保有する個人情報については、一般法である個人情報保護法が適用されることとなる。

しかし、同法には、保有個人データの開示の求めが規定されているものの、同法上個人情報取扱事業者に該当しなければかかる義務は課されないこととなる。また、開示の求めの対象である保有個人データとは、個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止についての全ての権限を有する個人データをいうところ、情報提供等の記録は個人情報取扱事業者が内容の訂正、削除、利用の停止、消去、第三者への提供の停止等を行える権限を有するものではないため、保有個人データに該当しないと考えられる。

情報提供等の記録の有する重要性に鑑みれば、行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者についても、情報提供等の記録を開示するようにすべきである。

この点、情報提供等の記録を保有する行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者は、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、健保連などの公的性格を有する者に限定されており、機関の性質として独立行政法人等に近い性質を有していると考えられる。また情報提供等を行う情報は、所得額、社会保障の給付額などの情報であり、事業者の営業のための情報というよりも、個別の法律に基づいた行政手続を行うためのものであって、事業者の営業のための情報に比し、営業の自由や営業の秘密等へ慎重な配慮が求められるとまではいえず、独立行政法人等と同様の扱いを受ける余地がある。

したがって、情報提供等の記録については、行政機関、地方公共団体及び独立行政法人等以外の者についても個人情報保護法を読み替えて適用するのではなく、独立行政法人等と同様の義務を課し、独立行政法人等個人情報保護法を準用することとするものである。

2 行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の読替え・適用除外

(1)利用及び提供の制限(行政機関個人情報保護法第8条及び独立行政法人等個人情報保護法第9条の読替え・適用除外)

第19条において特定個人情報の提供禁止及び例外を規定していることから、

第三者提供について規定した部分を適用しないよう読み替えるものである。また、行政機関個人情報保護法等は、目的外利用の禁止について、法令に基づく場合、本人の同意がある場合などを例外としているが、特定個人情報の要保護性及び情報提供等の記録については生命等保護のため必要な場合が想定されないことから、これに関する規定を適用除外とするものである。

(2)個人情報ファイルの保有等に関する事前通知先(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の読替え)

第29条と同様の趣旨から、事前通知先を特定個人情報保護委員会とするものである。

(3)開示請求、訂正請求及び利用停止請求について任意代理も認めること(行政機関個人情報保護法第12条第2項、第13条第2項、第14条第1号、第27条第2項、第28条第2項、第36条第2項及び第37条第2項、並びに独立行政法人等個人情報保護法第12条第2項、第13条第2項、第14条第1号、第27条第2項、第28条第2項、第36条第2項及び第37条第2項の読替え)

第29条と同様の趣旨から、任意代理を認めることとするものである。

(4)移送(行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法各第21条及び第22条の適用除外)

情報提供等の記録に記録されるのは、法定された情報提供者及び情報照会者間で所定の事務のため所定の情報が授受された旨であり(第23条)、情報提供等の記録に関する不開示情報についても、あらかじめ類型的に確定しているものと考えられる。そのため、他の行政機関の長や独立行政法人等において開示決定等をすることにつき正当な理由があるときが想定されず、また移送にかかる規定を適用すれば、情報提供等の記録に対する即時の開示を期待している開示請求者の利益を著しく害するため、これを適用除外とするものである。

(5)第三者に対する意見書提出の機会の付与等(行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法各第23条)

第三者に対する意見書提出の機会の付与等にかかる規定については、読替え又は適用除外されていない。したがって、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法第23条第2項に該当するような情報提供等の記録については、事前に第三者に意見書を提出させなければならないため、情報提供等記録開示システムを利用する場合でも即時開示ではなく、開示決定に先立ち第三者に意見書を提出させることとなる。

(6)他の法令による開示の実施との調整(行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法各第25条の適用除外)

第29条と同様の趣旨から、他の法令で同一の方法による開示が実施されている場合であっても、本法による開示を認めることとするものである。

(7)開示の手数料の減額・免除(行政機関個人情報保護法第26条第2項及び独立行政法人等個人情報保護法第26条第3項の読替え)

情報提供等の記録は、不正な情報提供がなされていないか本人自ら確認することができる重要な意義を有するものであり、開示請求権等を保障し、かつ個人にとって利便性の高い開示請求の手続を定める必要がある。そこで、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第16条第3項に倣い、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、手数料を減額又は免除することができることとするものである。

(8)訂正の際の通知先(行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法各第35条の読替え)

情報提供等の記録の訂正の際の通知は、行政機関個人情報保護法等では提供先へ通知するものと規定されている。情報提供等の記録の情報は他機関から提供を受けるものではないが、記録事項が誤っていた場合には、当該情報提供等の記録と同一の情報提供等の記録を有する者、すなわち情報照会者又は情報提供者及び情報提供ネットワークシステム上の情報提供等の記録を保有する総務大臣へ通知する必要があることから、その旨を読み替えるものである。

(9)利用停止請求を認めないこと(行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法各第36条から第41条までの適用除外)

行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法では、保有個人情報が適法に取得されたものでないとき及び目的内利用及び提供の規定に違反しているときに、利用停止請求を行えることを保障している。

しかし、情報提供等の記録については、情報提供ネットワークシステムにおいて自動保存されるものであり、適法に取得されたものでないときや目的内利用及び提供の規定に違反しているときが想定されない。また仮にそのような状態で保有されているとしても、不正な情報提供を行わせず、かつ適法な情報提供を安定的に情報提供ネットワークシステムにおいて実現するためには、不法・不正な提供がなされていないか、システム運用上支障の生じる提供がなされていないかなどを確認するために、情報提供等の記録を利用し続ける必要性が極めて高い。さらに、情報提供等の記録以外の特定個人情報については利用停止請求も引き続き認めており、また情報提供等の記録についても不適法な取扱いを行った者に対しては特定個人情報保護委員会が助言、指導、勧告、命令等を行うことができ(第50条及び第51条)、不適法な取扱いがなされているときの措置は、利用停止請求を認めなくとも妥当性を欠くものではないと考えられることから、利用停止請求に係る行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法第36条から第41条までの規定は適用しないこととするものである。

【第31条(地方公共団体等が保有する特定個人情報の保護)】

(地方公共団体等が保有する特定個人情報の保護)

第三十一条地方公共団体は、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、個人情報保護法及びこの法律の規定により行政機関の長、独立行政法人等及び個人番号取扱事業者(特定個人情報ファイルを事業の用に供している個人番号利用事務等実施者であって、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等及び地方独立行政法人以外のものをいう。以下この節において同じ。)が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえ、当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の適正な取扱いが確保され、並びに当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の開示、訂正、利用の停止、消去及び提供の停止(第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報にあっては、その開示及び訂正)を実施するために必要な措置を講ずるものとする。

本法では、特定個人情報や情報提供等の記録について、一般法三法の個人情報よりも厚い保護措置を設けるものである。地方公共団体については、地方分権の観点から、特定個人情報の取扱いについて一律に本法で規定することは望ましくなく、また現行の個人情報保護法制においても、地方公共団体における個人情報保護は、地方公共団体の定める個人情報保護条例に依るものとされている。

そこで、本条では本法の趣旨を踏まえ、地方公共団体が、当該地方公共団体及びその設置する地方独立行政法人の保有する特定個人情報について本法の趣旨にのっとった適正な取扱いを確保するため、また、本人が特定個人情報及び情報提供等の記録を確認できるようにするため、必要な措置を講じなければならない旨を規定したものである。

【第32条(個人情報取扱い事業者でない個人番号取扱事業者が保有する特定個人情報の保護)】

(個人情報取扱事業者でない個人番号取扱事業者が保有する特定個人情報の保護)

第三十二条個人番号取扱事業者(個人情報保護法第二条第三項に規定する個人情報取扱事業者を除く。以下この節において同じ。)は、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において本人の同意があり又は本人の同意を得ることが困難であるとき、及び第九条第四項の規定に基づく場合を除き、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて、特定個人情報を取り扱ってはならない。

第三十三条個人番号取扱事業者は、その取り扱う特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の特定個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

第三十四条個人番号取扱事業者は、その従業者に特定個人情報を取り扱わせるに当たっては、当該特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

第三十五条個人番号取扱事業者のうち次の各号に掲げる者については、その特定個人情報を取り扱う目的の全部又は一部がそれぞれ当該各号に定める目的であるときは、前三条の規定は、適用しない。

放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(報道(不特定かつ多数の者に対し客観的事実を事実として知らせることをいい、これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。以下この号において同じ。)を業として行う個人を含む。) 報道の用に供する目的

著述を業として行う者 著述の用に供する目的

大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者 学術研究の用に供する目的

宗教団体 宗教活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的

政治団体 政治活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的

前項各号に掲げる個人番号取扱事業者は、特定個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、特定個人情報の取扱いに関する苦情の処理その他の特定個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。

個人番号は、一般法三法にいう「個人情報」にあたるため、本法においては、これらの法律で規定されている利用目的による制限、第三者提供の制限等の規制を読み替えて適用し、又は適用除外とするなどして特定個人情報の保護を図り、さらに、個人番号が内包するデータマッチング等の危険性に照らして、一般法を超えた制限が必要な場合には、独自の制限規定を設けている。

しかし、個人情報保護法が適用されない事業者については一般法が存しないため、個人番号について個人の権利利益を保護する観点からこれらの事業者についても、個人情報保護法に準じた規定を設ける必要があるが、他方で、一般法三法の全ての規定に準じた規定を設けるとすると、零細企業を含む多数にわたる事業者に対して個人情報保護法と同様の規制を課すことになり実務的な影響、負担は多大なものとなる。

そこで、個人番号が内包する危険性に照らして必要不可欠と考えられるか否か、当該規制を設けた場合に生じると思われる実務上の負担などの諸事情を総合的に勘案した上で、個人情報保護法の規定の一部についてこれに相当する規定を、第32条から第35条までにおいて設けることとされたものである。

【第6章 特定個人情報保護委員会】

第1節 組織

【第36条(設置)】

(設置)

第三十六条内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、特定個人情報保護委員会(以下「委員会」という。)を置く。

委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。

1 三条委員会の必要性

今回設置される特定個人情報保護委員会は、特定個人情報を保有することとなる国の行政機関、地方公共団体及び民間事業者等全ての主体について監視又は監督を行うことが可能な機関となるため、国の行政機関を含めたあらゆる監視・監督対象からの独立性を有した存在でなくてはならない。

このため、内閣府の外局に、国家行政組織法第3条又は内閣府設置法第49条を根拠として設置される行政機関で、府省の外局として置かれる委員会(合議制の機関)を置くこととされたものである。

2 内閣総理大臣の「所轄」

「所轄」とは、内閣総理大臣及び各省大臣がそれぞれ行政事務を分担管理するについて、その管轄下にある行政機関との関係を表す用語であり、当該機関の独立性が強く、主任の大臣との関係が薄いものについて、行政機構の配分図としては一応その大臣の下に属するという程度の意味を表すときに用いられている。

高い独立性が求められる合議制の機関について多く見られ、既存の三条委員会では、公正取引委員会、国家公安委員会及び中央労働委員会の設置規定に見られる。

【第37条(任務)】

(任務)

第三十七条委員会は、国民生活にとっての個人番号その他の特定個人情報の有用性に配慮しつつ、その適正な取扱いを確保するために必要な個人番号利用事務等実施者に対する指導及び助言その他の措置を講ずることを任務とする。

特定個人情報保護委員会は、特定個人情報の漏えいや不正利用などに対処するために設置されるものであることから、その任務については、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の各第1条(目的)を参考にし、「その(個人番号その他の特定個人情報の)適正な取扱い」を確保するために必要な措置を講じることとされている。

この「適正な取扱い」とは、個人番号及び特定個人情報が、本法や個人情報保護法制にのっとり、正しく取り扱われることである。

特定個人情報保護委員会が講じる措置については、「個人番号利用事務等実施者に対する指導及び助言その他の措置」としているが、具体的には、第38条に掲げられている所掌事務がこれに相当する。

なお、特定個人情報保護委員会の設置は、特定個人情報保護委員会自体は制度の促進を任務としていないものの、そもそも社会保障・税番号制度は、国民生活の利便性向上等を目的として導入されるものであることから、個人情報保護法第1条を参考に「個人番号の有用性に配慮しつつ」として、個人番号の積極的な利用について配慮すべきことを明らかにしているものである。

【第38条(所掌事務)】

(所掌事務)

第三十八条委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

特定個人情報の取扱いに関する監視又は監督及び苦情の申出についての必要なあっせんに関すること。

特定個人情報保護評価に関すること。

特定個人情報の保護についての広報及び啓発に関すること。

前三号に掲げる事務を行うために必要な調査及び研究に関すること。

所掌事務に係る国際協力に関すること。

前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき委員会に属させられた事務

1 第1号

「監視又は監督」として行われる事務は、具体的には、第50条(指導及び助言)、第51条(勧告及び命令)及び第52条(報告及び立入検査)等において特定個人情報保護委員会に付与された権限を行使することであり、これらは正に、監視・監督機関である特定個人情報保護委員会の事務の中核を成している。

また、第1号においては「苦情の申出についての必要なあっせん」も挙げられている。例えば、ある省庁が保有する特定個人情報の取扱いについての苦情が寄せられた場合に、当該省庁の担当部署に引き継ぐこと、その後の処理経過について当該省庁に報告を求めること、必要に応じて指導・助言を行うことなどが想定される。

2 第2号

特定個人情報保護評価に関することとは、第27条において定める特定個人情報保護評価に関し、特定個人情報保護委員会が実施する事務を指すものである。

3 第3号

特定個人情報の保護についての広報及び啓発は、特定個人情報の性質とその保護の重要性を、広く一般に知らせ、特定個人情報の保護に対する国民等の意識を向上させるための事務である。

4 第4号

必要となる調査及び研究とは、例えば、日々進歩している情報システムに関する調査・研究、個人情報保護に関する法学的な研究、諸外国の番号制度の実態についての調査など、特定個人情報保護のために必要となる最新の情報や知識を調査・研究し、監視・監督業務に活用することである。

5 第5号

国際協力については、各国の個人情報保護のための第三者機関の代表者による国際会議(コミッショナー会議)への参加及びそれらの機関との連携等が、具体的な業務として想定されている。

【第39条(職権行使の独立性)】

(職権行使の独立性)

第三十九条委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。

本条は、特定個人情報保護委員会の組織的な面における独立性を保障する第36条に対応し、職権行使の際の独立性を明示的に定めるものである。

特定個人情報保護委員会が監視・監督機能を十分に発揮するためには、高い独立性を有することが重要であるが、これを担保する方法として、組織的には、いわゆる三条委員会とし、権限的には、本条において職権行使の独立性を担保するものである。

また、個別の委員長及び委員について、委員会の外部のみならず、内部についても職権行使の独立性が保障されるものである。

【第40条(組織等)】

(組織等)

第四十条委員会は、委員長及び委員六人をもって組織する。

委員のうち三人は、非常勤とする。

委員長及び委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

委員長及び委員には、個人情報の保護に関する学識経験のある者、情報処理技術に関する学識経験のある者、社会保障制度又は税制に関する学識経験のある者、民間企業の実務に関して十分な知識と経験を有する者及び連合組織(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第一項の連合組織で同項の規定による届出をしたものをいう。)の推薦する者が含まれるものとする。

1 委員長・委員の構成、常勤・非常勤の数

特定個人情報保護委員会は、特定個人情報を保護するために強力な権限を付与され、かつ、その業務には高度の専門性を要求されることから、その委員長及び委員は、複数の分野の専門家から構成され、かつ、委員会の運営に当たっては、それら専門家による慎重な合議が求められる。

委員長及び委員には、個人情報保護法制の専門家(学者・研究者)、電子情報処理組織に係る技術の専門家、個人番号が利用される分野(社会保障制度又は税制)についての専門家、民間企業の実務について十分な知識と経験を有する者及び地方公共団体の関係者など多くの専門家が必要となることから、委員等の数については、委員長1人及び委員6人の計7人とし、委員のうち3人は非常勤であり、常勤となる委員長及び委員は計4人である。

2 必要となる専門家

委員長・委員となる専門家・関係者の必要性について、まず個人情報保護法制の専門家は、番号法が一般法三法の特別法とされていることを踏まえたものである。

また、今回、特定個人情報の授受を行う仕組み(情報提供ネットワークシステム)が導入されることから、これに利用される電子情報処理組織(いわゆる情報処理システム)が安全かつ確実に作動するか(しているか)をチェックするための技術の専門家も不可欠である。

さらに、個人番号は、主に社会保障及び税分野において利用されることになるが、これらの分野の業務について専門的な知見を有する者がいなければ、業務の実態に即した実効性のある指導等を行うことが困難になると考えられる。

他方、監視・監督を受ける側に目を向けると、民間事業者と地方公共団体が個人番号の最大の利用者となることから、それらに対し有効な監視・監督を行うためには、その業務について知識・経験を有する者が必要となると考えられる。

3 委員長・委員の任命について

委員長及び委員の任命については、特定個人情報保護委員会が内閣総理大臣の所轄に属するものであることから、内閣総理大臣が行うこととし、任命の際には両議院の同意を得ることとされている。

いわゆる国会同意人事については、現在設置されている三条委員会の全てにおいて要件とされているが、その趣旨は、政治的中立性を確保し、行政(内閣)における独立性を担保するとともに、委員の選任に国会を関与させることにより、三条委員会にも民主的統制を及ぼすことにあると考えられる。

【第41条(任期等)】

(任期等)

第四十一条委員長及び委員の任期は、五年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。

委員長及び委員は、再任されることができる。

委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。

委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前条第三項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。

前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

特定個人情報保護委員会の委員長及び委員は、専門性を有する人格高潔な者から選任され、かつ、国会の同意を経て任命されることから、その任期については、委員会運営の継続性と安定性を保つためにある程度の期間をとって5年とし、再任も可能とするものである。なお、他の委員会では、公正取引委員会、国家公安委員会及び公害等調整委員会が、委員長・委員の任期を5年としている。

補欠の委員長及び委員の任期を前任者の残任期間としているのは、委員の任期が一斉に到来することを回避し、委員会運営の継続性・安定性を確保するためであり、他の委員会でも同様の規定が置かれている。なお、この規定と、委員長・委員を委員会設立時(平成26年1月)から一年ごと3回に分けて任命する経過措置を附則第4条に規定することで、委員長・委員の任期満了の時期を分散するものである。

委員長・委員の任期が満了した際の対応については、委員長又は委員に欠員が生じ得るようにすると、特定個人情報保護委員会の業務に大きな影響が出るおそれがあるため、後任者が任命されるまでの間は、当該委員長又は委員が引き続きその職務を行うものとするものである。

また、国会の閉会又は衆議院の解散という理由から両議院の同意が得られない場合については、長期間欠員が生じ、特定個人情報保護委員会の業務に影響が及ぶおそれがあるため、内閣総理大臣は、両議院の同意を得ることなく委員長又は委員を任命することができることとされている。ただし、この場合は、任命後の最初の国会において両議院の事後の承認を得ることとし、これが得られないときは、任命権者たる内閣総理大臣は、当該委員長又は委員を直ちに罷免しなければならないものとするものである。

【第42条(身分保障)】

(身分保障)

第四十二条委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。

破産手続開始の決定を受けたとき。

この法律の規定に違反して刑に処せられたとき。

禁錮以上の刑に処せられたとき。

委員会により、心身の故障のため職務を執行することができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。

委員長・委員の身分を保障することにより、特定個人情報保護委員会の独立性を担保する観点から、第1号から第4号までに掲げる場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがないこととするものである。

1 第1号

破産法第30条第1項による破産手続開始の決定を受けると、同法第2条第4項に定義する「破産者」となる。破産者については、第40条第3項に定める「人格が高潔で識見が高い者」という要件に疑義が生じるものであり、罷免事由とするものである。

2 第2号

「この法律の規定に違反して刑に処せられたとき」とは、委員長又は委員が、本法の規定に違反し、第9章に定める罰則が適用されたときのことであり、この場合、罰金以下の刑であっても本号に該当することとするものである。

3 第3号

「禁固以上の刑に処せられたとき」とは、禁固刑以上の刑を言い渡され、執行猶予となったときも含まれる。本号及び第2号に該当する者については、当然に「人格が高潔で識見が高い者」という要件に疑義を生じせしめ、また、特定個人情報保護委員会及び番号制度全体への信頼を損なわせるおそれがあり、罷免事由とするものである。

4 第4号

職務を取れる状況にない又は委員長・委員たるにふさわしくないと委員会自身により認定された場合であるので、当然罷免されることとするものである。ただし、この場合の委員会による認定には慎重な判断が求められるので、第45条第4項において、本人を除く全員一致を要件に課しているものである。

【第43条(罷免)】

(罷免)

第四十三条内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

本条の規定は、第42条における身分保障の規定の裏返しであり、同条各号に該当する事由が存在するときは、任命権者である内閣総理大臣は、当該委員長又は委員を罷免しなくてはならないこととするものである。

【第44条(委員長)】

(委員長)

第四十四条委員長は、委員会の会務を総理し、委員会を代表する。

委員会は、あらかじめ常勤の委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。

1 委員長の権限

国家行政組織法第3条に定める委員会は、国の行政機関の一類型であり、その長である委員長の権限については、同法第10条において「その機関の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する」と定めている。また、内閣府の外局の委員会の長たる委員長の権限についても、内閣府設置法第58条第1項において同様の規定が置かれている。

特定個人情報保護委員会の委員長については、この内閣府設置法の規定に基づき、事務局を含めた特定個人情報保護委員会の所掌事務全体(会務)をつかさどり、かつ、総合し、治める(総理)ものとするものである。

また、委員長が、特定個人情報保護委員会を「代表」するとは、委員会の議決に従って、外部に対し特定個人情報保護委員会を代表するという意味であって、委員長が単独で特定個人情報保護委員会の権限を代表して行うことは認められない。

2 委員長を代理する委員

委員長に事故があったときに備えて、委員長を代理して特定個人情報保護委員会の長としての権限を行使し、委員会の議長となる者をあらかじめ指定することとするものである。

【第45条(会議)】

(会議)

第四十五条委員会の会議は、委員長が招集する。

委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。

委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

第四十二条第四号の規定による認定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。

委員長に事故がある場合の第三項の規定の適用については、前条第二項に規定する委員長を代理する者は、委員長とみなす。

合議体としての特定個人情報保護委員会の会議は、委員長が招集し、委員長がいなければ、会議を開き議決することができないこととするものである。

会議の定足数は、委員長及び委員半数(3人)以上とする。つまり、委員長及び委員計7人の半数以上となる4人以上が定足数ということになる。

また、議決する場合は、会議に出席している委員長及び委員の過半数により決することとし、可否同数となったときは、委員長の決するところとするものである。

第4項では、委員長又は委員が第42条第4号に定める罷免事由(心身の故障又は非行行為)に該当することを特定個人情報保護委員会において認定する場合の議決方法を定めている。この場合、事案の内容に鑑み慎重な方法をとり、出席者の過半数ではなく、本人を除く全ての委員長及び委員の一致が必要とするものである。

第5項では、前条第2項で定めた委員長を代理する委員について、委員長に事故があった場合の取扱いを定めており、当該委員を委員長とみなすこととするものである。

【第46条(事務局)】

(事務局)

第四十六条委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。

事務局に、事務局長その他の職員を置く。

事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。

本条は、内閣府設置法第52条第1項及び第63条に基づき、特定個人情報保護委員会の事務を処理するための事務局を設置し、事務局には、事務局長その他の職員を置くこととするものである。

また、これに伴い、特定個人情報保護委員会事務局組織令(平成25年政令第301号)が定められ、事務局に総務課を置くこと及び総務課の所掌事務が規定されている。

【第47条(政治運動等の禁止)】

(政治運動等の禁止)

第四十七条委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

委員長及び常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

特定個人情報保護委員会の委員長及び委員については、政治的中立性が強く求められることとなる。そこで、全ての委員長及び委員が、在任中に、政党その他の政治団体の役員となること及び積極的に政治運動を行うことを禁止することとするものである。

さらに、常勤である委員長及び常勤の委員については、独立性を確保する観点から、内閣総理大臣の許可がある場合を除き、営利事業を営むことその他金銭上の利益を目的とする業務(公的なものも含む。)を行ってはならないこととするものである。

【第48条(秘密保持義務)】

(秘密保持義務)

第四十八条委員長、委員及び事務局の職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。その職務を退いた後も、同様とする。

一般職の国家公務員については、国家公務員法第100条第1項において守秘義務が規定されているが、特定個人情報保護委員会については、委員長及び委員に加え、事務局の職員についても、第72条における罰則(国家公務員法による罰則よりも重いもの)の適用対象とするため、本条における守秘義務を課すこととしている。

なお、ここでいう秘密とは、国家公務員法上の「秘密」と同義であり、非公知の事実であって、それを秘密として保護するに値すると認められるもののことである。

【第49条(給与)】

(給与)

第四十九条委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。

特定個人情報保護委員会の委員長及び委員は、第40条第3項により両議院の同意を得た上で任命されることとされており、また、国家公務員法第2条第3項第9号において「就任について選挙によることを必要とし、あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員」は、特別職の国家公務員になることとされている。

特別職の国家公務員が受ける給与については、特別職の職員の給与に関する法律により規定されており、特定個人情報保護委員会の委員長及び委員の給与についても、同法により規定されることとなる。

第2節 業務

【第50条(指導及び助言)】

(指導及び助言)

第五十条委員会は、この法律の施行に必要な限度において、個人番号利用事務等実施者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な指導及び助言をすることができる。この場合において、特定個人情報の適正な取扱いを確保するために必要があると認めるときは、当該特定個人情報と共に管理されている特定個人情報以外の個人情報の取扱いに関し、併せて指導及び助言をすることができる。

1 対象

個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者である。

2 指導、助言

例えば、どのような安全確保措置を講じるべきかについて,取り扱う特定個人情報の性質、利用形態等を踏まえ、物理的保護措置(保管庫の施錠、立入制限等)、組織的保護措置(職員に対する教育、研修の実施等)、技術的保護措置(アクセス制限等)などの観点から、助言し、指導することが想定される。

対象者からの要請に応じて指導、助言を行う場合と、特定個人情報保護委員会がその必要性を感知したことにより自ら行う場合の双方が考えられる。また、自己の個人番号が不当に取り扱われている旨の苦情を受けた場合に、これを契機として指導、助言を行うことも想定される。

3 特定個人情報以外の個人情報に対する指導、助言

特定個人情報への指導、助言と併せて「特定個人情報と共に管理されている特定個人情報以外の個人情報」に対する指導、助言もすることができるとするものである。例えば、ある事業者に対する立入検査を実施する過程で、当該検査の直接の対象ではない部署において、同一の執務室内で同一の管理権者の下で保管されている給与関係ファイル(源泉徴収事務に利用するため個人番号を含む。)と人事関係ファイル(職歴、人事評価等が記録されており個人番号を含まない。)のうち、人事関係ファイル(特定個人情報ではない。)がずさんな管理下に置かれていることが発覚したケースが考えられる。このようなケースで、人事関係ファイル(特定個人情報ではない。)に対する指導、助言を行うことは、共に管理されている給与関係ファイル(特定個人情報である。)の漏えいを防止する効果を持つのであり、特定個人情報の適正な取扱いの確保に資するといえる。

【第51条(勧告及び命令)】

(勧告及び命令)

第五十一条委員会は、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、特定個人情報の適正な取扱いの確保のために必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。

委員会は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

委員会は、前二項の規定にかかわらず、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

特定個人情報保護委員会の勧告、命令の権限を定めた規定である。委員会は、特定個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を講ずることをその任務としており、この任務を実現するため、指導、助言を規定した第50条、調査権限等を規定した第52条とともに、委員会の権限を規定するものである。

1 勧告(第1項)

特定個人情報の取扱いに関して法令違反行為を行った者が対象となる。したがって、特定個人情報を法律に基づいて取り扱う者のほか、違法に特定個人情報を取り扱う者も含まれる。特定個人情報を保護するためには、これを違法に取り扱う者、例えば不正に特定個人情報を入手してこれを悪用している者に対しても勧告をすることが必要となるためである。

2 勧告に従わない場合における命令(第2項)

対象は、前項の規定による勧告を受けた者である。

「正当な理由がなくて」が要件となっており、例えば災害その他当該勧告を受けた者の責めに帰すことができない理由で勧告に従うことができなかった場合は除かれる。

3 緊急の場合における勧告を前置しない命令(第3項)

第1項及び第2項の規定にかかわらず、緊急の場合には、勧告を前置することなく命令を発することができる旨を規定している。

「個人の権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるとき」とは、すでに発生している個人の重大な権利利益侵害の継続を停止させるために迅速に措置をとらなければならないと認められるときである。例えば、個人番号を自動的に無作為の相手に送信するような設定がなされ、日々刻々と個人番号が提供され続けているような場合が想定される。

4 罰則による担保

本条の命令に違反する行為は罰則の対象となる(第73条)。

【第52条(報告及び立入検査)】

(報告及び立入検査)

第五十二条委員会は、この法律の施行に必要な限度において、特定個人情報を取り扱う者その他の関係者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該特定個人情報を取り扱う者その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、特定個人情報の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

特定個人情報の取扱いに関する監視・監督のための権限の一つとして、立入検査等を規定するものである。委員会は、本条のほか、指導及び助言、勧告及び命令の行使等を通じて、特定個人情報の適正な取扱いを確保するという任務を果たすこととなる。

1 対象

特定個人情報を取り扱う者その他の関係者である。

「特定個人情報を取り扱う者」には、特定個人情報を取り扱う全ての者が含まれる。したがって、特定個人情報を法律に基づいて取り扱う者のほか、違法に特定個人情報を取り扱う者も含まれる。特定個人情報を保護するためには、これを違法に取り扱う者、例えば不正に特定個人情報を入手してこれを悪用している者に対しても本条の権限を及ぼすことが必要な場合もあるためである。

「その他の関係者」とは、特定個人情報を取り扱っている者以外の者で特定個人情報の取扱いに関係する者である。例えば、現に違法に特定個人情報を保有している者に対して当該特定個人情報を譲渡した者、違法に特定個人情報を取り扱っている事業主に雇用されている従業者などである。特定個人情報の適正な取扱いを確保して個人の権利利益を保護するためには、当該違法行為をした者以外の者に対しても報告や資料の提出を求め、又は立入検査等を実施する必要な場合があるため対象とされている。

2 「事務所その他必要な場所」

例えば、個人番号を取り扱う者の事務所などには情報漏えいに関係する書類が存在する蓋然性が高いことから調査の対象となる。「その他必要な場所」としては、違反行為に加担している者の営業所、また、関係者である職員、従業者等の自宅等も含まれる。

3 報告・資料の提出の求め、立入検査

報告を求める内容としては、例えば、特定個人情報が漏えいした場合にその状況、原因等が考えられる。

4 身分証明書の携帯、提示

事務所への立入りなどという強制手段を用いる場合であるから、その手続の適正を確保するため、身分証明書の携帯、提示を求めている。

5 「立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」

令状主義を規定した日本国憲法第35条との関連で、立入りの目的が犯罪捜査と関連のない場合、すなわち、単に法令の目的を確保するための指導、行政取締り等にある場合にのみ許されることを明らかにする趣旨である。

【第53条(適用除外)】

(適用除外)

第五十三条前三条の規定は、各議院審査等が行われる場合又は第十九条第十二号の政令で定める場合のうち各議院審査等に準ずるものとして政令で定める手続が行われる場合における特定個人情報の提供及び提供を受け、又は取得した特定個人情報の取扱いについては、適用しない。

第52条までにおいて、委員会による指導及び助言、勧告及び命令及び立入検査等の権限が規定されているが、国政調査権の行使として国会が特定個人情報を保管する場合など、委員会の権限の適用除外とする必要性、相当性が認められる場合もあることから、本条で適用除外を規定するものである。

1 適用除外の対象

第19条第12号に規定された場合、すなわち、各議院等による国政調査権の行使、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査、会計検査院の検査が行われる場合である。これらの手続(各議院審査等)が行われる場合は、適用除外としないと各手続の迅速な行使が阻害されるおそれがあり、さらに、国政調査等及び裁判所の手続は三権分立の観点から、会計検査院の検査は権限の性格上、それぞれ独立性が強く要求され、また、裁判の執行、刑事事件の捜査、犯則事件の調査は、裁判手続に付随する準司法的手続である上、密行性が要求され、一方で刑事訴訟法、国税犯則取締法等において各種の保護措置や裁判所による救済措置等が講じられていることなどから、適用除外とするものである。

【第54条(措置の要求)】

(措置の要求)

第五十四条委員会は、個人番号その他の特定個人情報の取扱いに利用される情報提供ネットワークシステムその他の情報システムの構築及び維持管理に関し、費用の節減その他の合理化及び効率化を図った上でその機能の安全性及び信頼性を確保するよう、総務大臣その他の関係行政機関の長に対し、必要な措置を実施するよう求めることができる。

委員会は、前項の規定により同項の措置の実施を求めたときは、同項の関係行政機関の長に対し、その措置の実施状況について報告を求めることができる。

大量の特定個人情報を流通させる仕組みである情報提供ネットワークシステムや関連する情報システムに関して、個人情報保護の観点からシステム構築及び維持管理の一層の適正化を図るため、これらのシステム構築及び維持管理に関して特定個人情報保護委員会の監視の対象とし、総務大臣及び行政機関の長に対して、必要な措置を講ずることを求めることができる旨を規定するものである。

1 第1項関係

(1)「個人番号その他の特定個人情報の取扱いに利用される情報提供ネットワークシステムその他の情報システム」

「個人番号その他の特定個人情報の取扱いに利用される情報システム」とは、情報提供ネットワークシステムのほか、住民基本台帳ネットワークシステム(地方公共団体及び機構が管理)、住民基本台帳システム(市町村長が管理)、個人番号カード関連システム(個人番号カードの記載情報の授受、カード作成、発行履歴等を管理する情報システム(市町村長が管理)、各行政機関等が使用する個人番号を取り扱う既存業務システム(個人番号利用事務実施者等が管理)が想定される。

(2)「費用の節減その他の合理化及び効率化を図った上でその機能の安全性及び信頼性を確保するよう」

「機能の安全性及び信頼性を確保するよう」とは、システムに対する外部からの侵入を許さないよう、セキュリティ対策が講じられ(安全性の確保)、システム障害が発生しても迅速に復旧されるなどシステムが安定的・継続的に運用され(信頼性の確保)、必要な機能が発揮されることを意味する。

システムの安全性、信頼性については、一般的にはコストをかければかけるほど向上するものであるが、無制限にシステム投資のコストをかけることは許されないため、「システムの安全性及び信頼性の確保」と「費用の節減その他の合理化及び効率化」の両者のバランスを保って行う必要があることから、「費用の節減その他の合理化及び効率化を図った上で」とするものである。

(3)「総務大臣その他の関係行政機関の長に対し、必要な措置を実施するよう求めることができる」

情報提供ネットワークシステムの構築及び維持管理に関する求めについては、総務大臣は、情報提供ネットワークシステムの設置主体であるため、委員会が総務大臣に対して直接行うことができることとするものである。

個人番号及びその他の特定個人情報の取扱いに利用されるその他の情報システムのうち、住民基本台帳ネットワークシステムや住民基本台帳システム、個人番号カード関連システムについては、地方公共団体や機構がその構築及び維持管理を行うものである。これらのシステムの構築及び維持管理に関する求めについて特定個人情報保護委員会が直接的に地方公共団体や機構に対して行うことも考えられるが、@個人番号カード及び通知カードについて総務大臣が所管することとされていること、A総務大臣は地方行政全般に関する所管大臣であること、B総務大臣は、地方公共団体情報システム機構法に基づき、機構に対する監督を行う機関とされていることを踏まえ、地方公共団体や機構に対する指導、監督等を行う総務大臣を特定個人情報保護委員会の権限の行使対象とすることで、地方公共団体や機構に対して間接的に必要な措置を求めることとするものである。

また、行政機関の長が使用する情報システムについては、設置主体である行政機関の長に対して委員会が直接当該行政機関の長に対して行うこととするものである。

2 第2項関係

第1項に基づく措置の実施状況について、特定個人情報保護委員会は、関係行政機関の長に対し報告を求めることができることとするものである。

【第55条(内閣総理大臣に対する意見の申出)】

(内閣総理大臣に対する意見の申出)

第五十五条委員会は、内閣総理大臣に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた特定個人情報の保護に関する施策の改善についての意見を述べることができる。

特定個人情報の保護については、個人番号の利用状況、個人番号利用事務等実施者における特定個人情報の取扱状況等に照らし、必要に応じて、適切な方策が講じられる必要があるが、特定個人情報保護委員会は、監視・監督等のための機関として設置されるものであり、番号法を含む制度全体については別途内閣府が所管することとされている。

そこで、特定個人情報保護委員会が、本法に規定された所掌事務を遂行する中で、特定個人情報の保護施策に改善が必要であると認識した場合は、主任の大臣である、内閣府の長としての内閣総理大臣に意見を述べることができることとするものである。

【第56条(国会に対する報告)】

(国会に対する報告)

第五十六条委員会は、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。

特定個人情報保護委員会には、任務の性質上高い独立性が求められるが、他方、委員長及び委員の任命に当たって両議院の同意を要件とし、また、本条により所掌事務の処理状況について国会への年次報告を義務付けることで、立法府を通じた民主的統制が及ぶようにするものである。この場合の処理状況とは、例えば、番号法違反事案としてどのようなものが何件あったか、それらに対し特定個人情報保護委員会としてどのような措置をとったかといった事項が想定される。

第3節 雑則

【第57条(規則の制定)】

(規則の制定)

第五十七条委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、特定個人情報保護委員会規則を制定することができる。

内閣府設置法第58条第4項では、「各委員会及び各庁の長官は、法律の定めるところにより、政令及び内閣府令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる」とされており、これに基づき、特定個人情報保護委員会が「特定個人情報保護委員会規則を制定することができる」旨を定めるものである。

【第7章 法人番号】

【第58条(通知等)】

(通知等)

第五十八条国税庁長官は、政令で定めるところにより、法人等(国の機関、地方公共団体及び会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法令の規定により設立の登記をした法人並びにこれらの法人以外の法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの(以下この条において「人格のない社団等」という。)であって、所得税法第二百三十条、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百四十八条、第百四十九条若しくは第百五十条又は消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第五十七条の規定により届出書を提出することとされているものをいう。以下この項及び次項において同じ。)に対して、法人番号を指定し、これを当該法人等に通知するものとする。

法人等以外の法人又は人格のない社団等であって政令で定めるものは、政令で定めるところにより、その者の商号又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地その他財務省令で定める事項を国税庁長官に届け出て法人番号の指定を受けることができる。

前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項に変更があったとき(この項の規定による届出に係る事項に変更があった場合を含む。)は、政令で定めるところにより、当該変更があった事項を国税庁長官に届け出なければならない。

国税庁長官は、政令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定により法人番号の指定を受けた者(以下「法人番号保有者」という。)の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を公表するものとする。ただし、人格のない社団等については、あらかじめ、その代表者又は管理人の同意を得なければならない。

本条は、国税庁長官が法人等ごとに特定の法人等を識別するための法人番号を指定し、及び通知することとし、対象となる法人等の範囲を定め(第1項)、第1項の対象外の法人及び人格のない社団等(「法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがある者」をいう。以下同じ。)について届出により法人番号の指定を受けることができる旨規定し(第2項)、第2項の届出事項に変更があった場合には変更事項の届出義務を課し(第3項)、法人番号の指定を受けた者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を原則として公表する(第4項)ものとするものである。

1 第1項

国税庁長官が法人番号の指定を行うこととした基本的な考え方は、個人番号の指定を、住民を一番よく把握している基礎自治体(市町村)を所管している総務省の所管とした考え方と同様、法人番号の指定対象とすべき法人等を最も網羅的に把握している国税庁の所管とすることが適当としたものである。

国税庁長官が、法人番号を指定する範囲は、@国の機関、A地方公共団体、B法令の規定により設立の登記をした法人(以下、「設立登記法人」という。)のほか、C前記以外の法人又は人格のない社団等であって所得税法第230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)、法人税法第148条(内国普通法人等の設立の届出)、第149条(外国普通法人となつた旨の届出)、第150条(公益法人等又は人格のない社団等の収益事業の開始等の届出)、消費税法第57条(小規模事業者の納税義務の免除が適用されなくなった場合等の届出)のいずれかの届出書を提出することとされているものとする。本項において法人番号の指定を受けることとなる者の範囲をこのように定めた趣旨は、社会保障・税制を含む各種行政分野において手続の当事者等となっている国の機関、地方公共団体及び設立登記法人並びにこれらの法人以外の法人又は人格のない社団等であって、税法により法人税若しくは消費税の申告納税義務が課されることになる者又はその支払給与につき原則として所得税の源泉徴収義務が課されることとなる者に対して的確に法人番号を指定し、分野横断的に広く法人等をカバーする特定の法人等を識別可能な番号として活用しようとするものである。

(1)国の機関

「国の機関」には、行政機関のほか、裁判所及び国会の機関も含まれる。

(2)地方公共団体

「地方公共団体」とは、地方自治法第1条の3において定義されている普通地方公共団体及び特別地方公共団体をいう。すなわち、都道府県、市町村、特別区、地方公共団体の組合及び財産区のほか、市町村の合併の特例に関する法律に基づいて設けられた合併特例区のように他の法律により地方公共団体とされるものを含む。一方、「地方公共団体の機関」とされていないことから、地方公共団体を構成する各機関(都道府県の議会等)は法人番号の指定対象とはならない。

(3)設立登記法人

設立登記法人は、会社法等の我が国の法令の規定により設立の登記を行った法人を指す。法人としての活動実態の有無は問わない。例えば、解散した法人であっても、登記記録が閉鎖されていない限り、法人番号が指定される。

指定対象が「法人」とされていることから、一つの法人に対して一つの法人番号を指定することになる。したがって、法人を構成する支店・事業所等に対しては、法人番号は指定されない(設立登記法人以外の法人等についても同様。)。

なお、外国の法令に準拠して設立された法人その他の団体については、我が国の法令に基づいて何らかの登記がされた場合(例えば、我が国において取引を継続的に行おうとする外国会社が、会社法に基づき「外国会社の登記」を行った場合)であっても、設立登記法人には該当しない。

(4)これらの法人以外の法人

「これらの法人以外の法人」とは、具体的には@我が国の法律の規定によって成立した(民法第33条第1項参照)が、設立の登記を行わない法人及びA我が国においてその成立を認許された外国法人(民法第35条参照)を意味する。前者には、国民年金基金、厚生年金基金、健康保険組合、土地改良区、認可地縁団体などがあり、後者には外国、外国の行政区画及び外国会社並びに法律又は条約の規定により認許された外国法人がある。

(5)人格のない社団等

人格のない社団等については、本項において「法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの」とされている。当該社団等で代表者又は管理者の定めがある者とは、従来の税務上の取扱いと同様、当該社団又は財団の定款、寄附行為、規約等によって代表者又は管理人が定められている場合のほか、当該社団又は財団の業務に係る契約を締結し、その金銭、物品等を管理する等の業務を主宰する者が事実上あることを含むものと解される。

なお、人格のない社団については、具体的には、

@団体としての組織を備えていること、

A多数決の原則が行われていること、

B構成員が変更しても団体そのものは存続すること、

Cその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること、

の要件が備わる団体が該当することになると解される。

また、民法上の組合(民法第667条第1項)、匿名組合(商法第535条)、投資事業有限責任組合(投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項)、有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項)は、当事者間の契約に過ぎないことから、人格のない社団等には該当しない。

法人番号については指定される番号の構成、通知の具体的な方法等について政令に委任されている。法人番号の通知は、法人番号を指定した事実を本人に知らせる単なる事実行為にすぎないため、仮に、所在地不明等の事情により通知が当該法人等に到達しない場合にも、法人番号の指定に影響を及ぼすものではない。また、本条で規定される法人番号の指定・通知及び法人番号等の公表については、行政手続法の適用を受けないと解されている。

2 第2項

本項では、国税庁長官が第1項により法人番号を指定する法人又は人格のない社団等以外の法人又は人格のない社団等であっても、一定のものについては、国税庁長官に届け出ることによって法人番号の指定を受けることができるようにするための規定である。

本項の届出により法人番号の指定を受けることができる者についての具体的な要件は政令に委任されているが、社会保障・税番号制度導入の趣旨・目的や国税庁長官がその者が実在することその他の要件の該当性を的確に判断し得ることを考慮し、我が国の法律の規定によって成立したが、設立の登記を行わない法人や国税に関する法律に基づき税務署長等に申告書、届出書等の書類を提出する者又はその者から法人番号の提供を求められる者が想定されている。

3 第3項

第3項は、法人等が前項の届出によって法人番号を指定された場合、当該届出事項の正確性確保の観点から、当該届出事項に変更があった場合には、当該法人番号保有者に対して当該変更事項について国税庁長官への届出の義務を課すものである。

4 第4項

法人番号は、個人番号と異なり、自由に流通させることができ、官民を問わず様々な用途で利活用するものとされている。そこで、民間に対する情報提供手段、又は、行政機関の長等に対する法第59条第2項によらない簡易な確認手段を提供することを目的として、本項では、国税庁長官が法人番号保有者の@商号又は名称、A本店又は主たる事務所の所在地及びB法人番号を公表することを規定するものである。

(1)法人情報の公表

国税庁長官は上記3情報を公表するものとされており、法人番号の指定・通知後に公開されることになる(ただし、人格のない社団等については以下(3)参照。)。法人番号とともに公表される商号等の情報は、設立登記法人の場合には、国税庁長官が法務大臣から提供を受けた登記記録に基づき公表し、税法上の届出や第2項に規定する届出により指定を受けた法人及び人格のない社団等の場合には、原則として当該届出等の記載事項に基づき公表することとなる。したがって、登記上の所在地が名目に過ぎず、活動実態が当該所在地にない場合であっても、当該登記上の所在地が公表される。

(2)公表の方法

公表の方法については政令に委ねられているが、行政機関のみならず民間分野も含め幅広い者が容易にアクセスすることができるよう、インターネットによる公表が予定されている。その際には、公表情報利用者の利便性に配慮して、上記3情報に基づく検索や二次利用可能な形式による電子的情報の提供が可能となることが期待される。

(3)人格のない社団等の同意

人格のない社団等については、公表に際してその代表者等の同意が必要とされている。これは、人格のない社団等の中には、名称や主たる事務所の所在地について公表を望まないために法人成りしていないものがあることも想定されることから、そのような人格のない社団等の権利を尊重する趣旨である。

【第59条(情報の提供の求め)】

(情報の提供の求め)

第五十九条行政機関の長、地方公共団体の機関又は独立行政法人等(以下この章において「行政機関の長等」という。)は、他の行政機関の長等に対し、特定法人情報(法人番号保有者に関する情報であって法人番号により検索することができるものをいう。第六十一条において同じ。)の提供を求めるときは、当該法人番号を当該他の行政機関の長等に通知してするものとする。

行政機関の長等は、国税庁長官に対し、法人番号保有者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号について情報の提供を求めることができる。

本条は、行政機関の長等が他の行政機関の長等に対して特定法人情報の提供の求めを行う際、法人番号を通知して行うこととし、正確かつ効率的な法人情報の授受を実現し、行政の効率的な運営ひいては国民の利益に資することを本旨とするものである。また、その前提として、行政機関の長等が、国税庁長官から法人番号保有者の情報を入手することができることを併せて規定している。

1 第1項

主体の「行政機関の長等」には、国会の機関の長及び裁判所長を含まない。これは三権分立によって立法、司法は行政から独立しており、行政機関の長等の行為を一般的に規制する規定において国会の機関の長及び裁判所長の行為を規制するだけの合理的理由が認められず、規定に馴染まないからであり、国会や裁判所が法人番号を通知して法人情報の授受を行うことは差し支えない。

法人番号は個人番号と異なり、特に利用制限を設けず、広くそれぞれの機関内での法人情報の管理や機関間での正確で効率的な法人情報の授受に活用可能なものとして導入し、その活用により当該機関に便益をもたらすのみならず、これが広く活用されれば社会全体の便益の増大をもたらすものである。そのため、行政機関の長等の間で特定法人情報の授受を行う際、行政事務の効率化を図り、もって国民利益に還元する観点から、法人番号の通知をして行うことを義務付けるものである。他方、同様の義務を広く特定法人情報の授受を行う民間事業者等に課すことについては、授受の頻度や量の異なる民間事業者に一律に義務付け、民間事業者等が法人番号を利用しない自由をはく奪するまでの合理性はなく、民間事業者の利便性のために強制する必要はないことから、行わないこととされている。

2 第2項

行政機関の長等は、第1項の法人情報の授受を円滑に行うためなど必要と認められる場合には、国税庁長官に対して法人番号保有者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号について情報の提供を求めることができる。この場合、国税庁長官は、行政機関情報公開法の開示基準を念頭に個別にその提供の妥当性について検証するまでもなく、公表している法人等の情報を提供することができ、また、公益性確保の観点から、第58条第4項で公表の同意が得られなかった人格のない社団等の情報についても、必要な範囲で提供して差し支えないものと考えられる。

【第60条(資料の提供)】

(資料の提供)

第六十条国税庁長官は、第五十八条第一項の規定による法人番号の指定を行うために必要があると認めるときは、法務大臣に対し、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号(会社法その他の法令の規定により設立の登記をした法人の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所において作成される登記簿に記録されたものに限る。)その他の当該登記簿に記録された事項の提供を求めることができる。

前項に定めるもののほか、国税庁長官は、第五十八条第一項若しくは第二項の規定による法人番号の指定若しくは通知又は同条第四項の規定による公表を行うために必要があると認めるときは、官公署に対し、法人番号保有者の商号又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地その他必要な資料の提供を求めることができる。

本条は、第1項において、国税庁長官が第58条第1項の規定による法人番号の指定を行うために必要があると認めるときは、法務大臣に対し、商業登記法第7条(他の法令で準用される場合も含む。)に規定する会社法人等番号(設立の登記をした法人の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所において作成される登記簿に記録されたものに限る。)その他の当該登記簿に記録された事項の提供を求めることができる旨規定し、第2項において、国税庁長官が第58条第1項若しくは第2項の規定による法人番号の指定若しくは通知又は第58条第4項の規定による公表を行うため必要があると認めるときは、官公署に対し、法人番号の指定を受けた者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地その他必要な資料の提供を求めることができる旨規定するものである。

1 第1項

国税庁長官が法人番号の指定を行う対象の大部分は、会社法その他の法令の規定により設立の登記をし、登記所の登記簿に会社法人等番号が記載されている法人であることから、これらの法人については、当該会社法人等番号を基礎として法人番号を指定することとし、そのために必要な会社法人等番号及びその会社法人等番号が記録された登記簿の記録事項(以下「登記記録」という。)を国税庁長官が法務大臣に求めることができる旨規定したものである。

国税庁長官から法務大臣に提供を求めることができる登記記録について、本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所において作成される登記簿に記録されたものに限っているのは、法人の支店や従たる事務所が法人番号の指定対象ではないためである。

2 第2項

国税庁長官が、法人番号の指定、通知及び公表を行うために必要があると認めるときには、官公署に対し必要な資料の提供を求めることができる旨規定したものである。ここに「官公署」とは、国、地方公共団体その他の各種の公の機関の総称であり、国及び地方公共団体の各種の機関は全て含まれる。

国税庁長官が本項の規定により各官公署に資料の提供を求めることが想定されるものは、@市町村又は都道府県に対し、地方独立行政法人(公立大学、公立病院等)や地方自治法第1条の3第3項の特別地方公共団体(広域連合、一部事務組合、財産区等)の情報、A主務大臣等に対し、設立登記のない法人(厚生年金基金、健康保険組合、土地改良区等)の情報、B法務大臣に対し、外国法人や法人番号保有者に関する登記記録が考えられる。

【第61条(正確性の確保)】

(正確性の確保)

第六十一条行政機関の長等は、その保有する特定法人情報について、その利用の目的の達成に必要な範囲内で、過去又は現在の事実と合致するよう努めなければならない。

本条は、第59条の規定により、行政機関の長等が他の行政機関の長等に対して特定法人情報の提供を求めるときは法人番号を通知することとされたことから、法人番号を通知して法人情報の授受を行う行政機関の長等に対して、利用目的の達成に必要な範囲内で、保有する特定法人情報が過去又は現在の事実と合致するよう努力義務を規定するものである。

【第8章 雑則】

【第62条(指定都市の特例)】

(指定都市の特例)

第六十二条地方自治法第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市(次項において単に「指定都市」という。)に対するこの法律の規定で政令で定めるものの適用については、区を市と、区長を市長とみなす。

前項に定めるもののほか、指定都市に対するこの法律の規定の適用については、政令で特別の定めをすることができる。

地方自治法第252条の19第1項の指定都市においては、同法第252条の20の規定により区を設け、市長の権限に属する事務を分掌させる等、事実上区ごとに事務の処理が行われていることから、本条において、区を市町村とみなして取り扱うこととするものである。

【第63条(事務の区分)】

(事務の区分)

第六十三条第七条第一項及び第二項、第八条第一項(附則第三条第四項において準用する場合を含む。)、第十七条第一項及び第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)並びに附則第三条第一項から第三項までの規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

本法において市町村長が処理することとされている事務についての区分を定めるものである。

1 市町村の付番事務を法定受託事務とすることについて

個人番号は、当面は社会保障分野や税分野で利用することとしているが、将来的には幅広い分野で利用されることが期待されていることから、市町村による個人番号の付番事務(第7条第1項及び第2項、第8条第1項(附則第3条第4項において準用する場合を含む。)並びに附則第3条第1項から第3項まで)については、国家の統治の基本となるものであると捉え、地方分権推進計画で示された法定受託事務のメルクマールのうち、「1 国家の統治の基本に密接な関連を有する事務」として、法定受託事務とするものである。

2 市町村の個人番号カード交付事務を法定受託事務とすることについて

個人番号カードは、上記の個人番号が利用される場面において、個人番号の真正性を確保するための手段として提示が求められるなど、個人番号と同じく幅広い分野で利用されることから、市町村による個人番号カード交付・記載事項変更事務(第17条第1項及び第3項(同条第4項において準用する場合を含む。))については、国家の統治の基本となるものであると捉え、地方分権推進計画で示された法定受託事務のメルクマールのうち、「1 国家の統治の基本に密接な関連を有する事務」として、法定受託事務とするものである。

【第64条(権限又は事務の委任)】

(権限又は事務の委任)

第六十四条行政機関の長は、政令(内閣の所轄の下に置かれる機関及び会計検査院にあっては、当該機関の命令)で定めるところにより、第二章、第四章、第五章及び前章に定める権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができる。

本法の効率的な運用を図るため、行政機関の長が、一定の権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができることを定めるものである。

本法に基づく権限又は事務は、基本的に、本法の実施に最終的な責任を持つ行政機関の長に帰属させている。しかし、事務処理の効率性の観点から、保有個人情報の所在、案件の重要性、定型性等を勘案し、当該行政機関の職員に委任した方が適切である場合があることから、政令で定めるところにより、行政機関の長の権限又は事務を委任することができることとするものである。

なお、内閣の所轄の下に置かれる機関(人事院)及び会計検査院にあっては、政令ではなく、当該機関の命令、すなわち人事院規則及び会計検査院規則において委任を受ける職員の範囲が決められることとなる。

【第65条(主務省令)】

(主務省令)

第六十五条この法律における主務省令は、内閣府令・総務省令とする。

本法における主務省令を内閣府令・総務省令と定めるものである。

本法における省令は、通知カードに係る第7条第1項、第4項及び第8項の総務省令、激甚災害の際の個人番号の利用に係る第9条第4項の内閣府令、個人番号カードに係る第2条第7項及び第17条第8項並びに情報連携記録の保存に係る第23条第1項第4号の総務省令、法人番号に係る第58条第2項の財務省令のほか、第16条の本人確認措置に係る書類について定める省令、別表第一、別表第二において対象となる事務及び情報について定める省令がある。

このうち、別表の省令及び本人確認措置にかかる書類を定める省令以外の省令は、個別に省令名を規定することとし、第16条の本人確認措置に係る書類について定める省令、別表第一、別表第二の省令は主務省令として規定されている。

別表第一、別表第二において対象となる事務及び情報については、その外縁を法律に規定した上で最終的には省令(以下「別表省令」という。)に委任する規定ぶりとなっている。

その際、当該別表省令については、

・ 社会保障・税番号制度又は情報提供ネットワークシステムを所管する立場から、個人番号の利用範囲又は情報連携の範囲を統一的に管理することが、制度の円滑、かつ、適正な運用に資すると考えられること

・ 社会保障・税番号制度においては、個人番号を利用するに当たって当該機関が住基ネットから本人確認情報の提供を受けることが必須の仕組みとなっていること

・ 事務及び情報の所管省庁との共同省令とした場合、本法においては、事務の所管と情報の所管の組み合わせ等により相当種類の共同省令を制定する必要が生じるところ、制度の運用上煩雑に過ぎること

から、社会保障・税番号制度の所管省庁である内閣府並びに情報提供ネットワークシステム及び住民基本台帳法の所管省庁である総務省の共同省令(内閣府令・総務省令)とするものである。

【第66条(政令への委任)】

(政令への委任)

第六十六条この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

本条は、本法の規定に基づく具体的な委任事項のほか、本法の実施のための手続その他その施行に関し必要な事項を政令で定めることとするものである。

なお、特定個人情報保護委員会規則については、第57条の規定により特定個人情報保護委員会が制定することができることとされているため、本条における政令への委任は必要ない。

【第9章 罰則】

【第67条(特定個人情報ファイルの不正提供)】

第六十七条個人番号利用事務等又は第七条第一項若しくは第二項の規定による個人番号の指定若しくは通知、第八条第二項の規定による個人番号とすべき番号の生成若しくは通知若しくは第十四条第二項の規定による機構保存本人確認情報の提供に関する事務に従事する者又は従事していた者が、正当な理由がないのに、その業務に関して取り扱った個人の秘密に属する事項が記録された特定個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工した特定個人情報ファイルを含む。)を提供したときは、四年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

個人番号はそれを悪用して不当なデータマッチングに利用される危険があり、また特定個人情報ファイルは、その検索の容易性及びそれに含まれる個人情報の大量性ゆえに、これが漏えいした場合には、個人の権利利益に対する重大な侵害をもたらすおそれがある。このため、正当な理由なく特定個人情報ファイルを提供する行為を処罰することとするものである。

1 主体

罰則の対象主体は、以下の@からCまでの事務に従事する者又は従事していた者である。

@ 個人番号利用事務及び個人番号関係事務

A 第7条第1項又は第2項の規定による個人番号の指定又は通知に関する事務

B 第8条第2項の規定による個人番号とすべき番号の生成又は通知に関する事務

C 第14条第2項の規定による機構保存本人確認情報の提供に関する事務

これらの者は特定個人情報ファイルを取り扱い得る立場にあることから主体とするものである。「事務に従事する者」とは、役員、職員、従業者、派遣労働者等である。

2 「正当な理由がないのに」

正当な理由がある場合とは、例えば、第19条において他者への提供が例外として許されている場合などである。

3 「個人の秘密に属する事項が記録された特定個人情報ファイル」

「秘密」とは、一般に知られていない事実であること(非公知性)、他人に知られないことについて相当の利益があること(秘匿の必要性)を要件とする。

4 「その全部又は一部を複製し、又は加工した特定個人情報ファイルを含む。」

複製とは、例えば、電子計算機処理に係る特定個人情報ファイルを私用の電磁的記録媒体にコピーすること、紙媒体に係る特定個人情報ファイルをコピーすることである。加工とは、例えば、特定個人情報ファイルの内容の一部に変更を加えたり、一部を抜き出すことである。

特定個人情報ファイルに含まれる「個人番号」に代えて「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」を含む特定個人情報ファイルも含まれる(第2条第8項、第9項。)。したがって、脱法的に、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどした場合であっても、本条の規制の対象となる。

5 提供

他者が利用できる状態に置くことをいう。データベースであるファイルが記録された電磁的記録媒体や紙媒体であるファイルを交付すること、データベースであるファイルを電子メール又はインターネットを通じて交付することなどが該当する。そのほか、個人の秘密に属する事項が記録された特定個人情報ファイルが表示されたパソコン画面を自由に閲覧できる状態にすること、特定個人情報ファイルを管理するシステムを操作するためのパスワードを知らせてこれを操作させることなども該当する。

6 法定刑等

4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれらの併科である。

行為の悪質性、想定される被害の大きさ等に照らし、本法の中で最も重い法定刑となっている。また、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法においては同様の行為について2年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされており、これらよりも法定刑が高くなっている。

【第68条(個人番号の不正提供、盗用)】

第六十八条前条に規定する者が、その業務に関して知り得た個人番号を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、三年以下の懲役若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

特定個人情報ファイルを提供する行為については第67条において規定されているが、ファイル化されていない個人番号にあっても、これが漏えいした場合には、これを使った不当なデータマッチングにより個人の権利利益が大きく、侵害のおそれが高いことから、本条において罰則規定を設けるものである。

1 主体

「前条に規定する者」であり、第67条と同様である。

2 「その業務に関して知り得た個人番号」

「業務」は、過去に従事したものと現に従事しているものを含む。ファイルに限定されないため散在している個人番号も含まれる。

「個人番号」には「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」も含まれる(第2条第8項が本条において同様である旨規定している。)。したがって、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどしたものを提供、盗用することも、本条の対象となる。

3 「自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したとき」

「自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的」とは、例えば、個人番号を反社会的勢力に売却して経済的利益を図ることが考えられる。

「提供」については第67条の解説のとおり。「盗用」とは、盗み利用することである。例えば、個人番号利用事務等実施者の職員が、職務上取り扱っている個人番号の対象者になりすまし、当該個人番号を使い、社会保障給付に関する手続を行うことなどが該当する。

4 法定刑等

3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金、又はこれらの併科である。

悪質性の高い行為であり、第67条に次いで重い法定刑となっている。また、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法においては同様の行為について1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされており、これらよりも法定刑が高くなっている。

【第69条(情報提供ネットワークシステムに関する秘密漏えい)】

第六十九条第二十五条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、三年以下の懲役若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

情報提供ネットワークシステムは、これを通じて大量の個人情報が流通することになる仕組みであることから、これに関する秘密が漏えいし、又は盗用された場合には、大量の個人情報がデータマッチングされて個人の権利利益に対する大きな侵害が生じるなどの危険がある。そこで、情報提供ネットワークシステムに関する秘密保持義務を規定した第25条に違反する行為について、本条により罰則を設けるものである。

1 主体

第25条のとおりである。すなわち、情報提供ネットワークシステムを運営する機関の職員、同システムを利用する情報提供者及び提供照会者の役員、職員、従業者、これらの機関に派遣されている派遣労働者、更に、これらの機関から委託を受けた受託者及び再受託者やその従業者・派遣労働者などである。

2 「第25条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用し」

第25条のとおりである。すなわち、例えば、情報提供ネットワークシステムを運営する機関の職員等については、情報提供等事務において用いる符号、システムの機器構成・設定、暗号及び複号に必要な鍵情報等を漏らし又は盗用すること、情報照会者・情報提供者の職員等については、上記の符号、暗号及び複号に必要な鍵情報等を漏らし又は盗用することなどが、本条の対象となり得る。

3 法定刑

3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金、又はこれらの併科である。

情報提供ネットワークシステムを通じて社会保障等の分野における機微性の高い情報が大量にやりとりされることなどに照らし、本条違反の行為は個人番号の漏えい等に比肩する程度に違法性が高いと考えられることから、第68条と同じく、第67条に次ぐ重い法定刑となっている。

【第70条(詐欺行為等による情報取得)】

第七十条人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の個人番号を保有する者の管理を害する行為により、個人番号を取得した者は、三年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。

前項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない。

社会保障・税番号制度は、個人番号を使うことによる行政の効率化、社会保障及び税分野における公平な社会の実現などの理念を実現するための社会的な仕組みであるが、個人番号が不当に流出した場合には、個人の権利利益が侵害されるとともに制度そのものに対する信用が失われることとなる。

そのような事態を防ぐためには、個人番号を利用する者による漏えい等に対して厳格に対処するとともに、これを保有する者から不当に取得する行為に対しても同様に厳格に対処することが必要である。そこで、本条において、特に違法性の高い手段による個人番号の不正取得を処罰の対象とするものである。

1 主体

主体に限定はなく、何人も主体となり得る。

2 行為

人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為(詐欺等行為)、又は、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の保有者の管理を害する行為により(管理侵害行為)である。

人を欺く行為による取得とは、例えば、個人番号利用事務等実施者の職員を装って本人から個人番号を聞き出したり、逆に、本人を装って個人番号利用事務等実施者の職員から個人番号を聞き出す場合が挙げられる。暴行、脅迫による場合とは、これらを手段として相手方の意思に反して個人番号を聞き出す行為などである。有体物に記録された個人番号を取得する行為のほか、有体物に記録されていない個人番号を口頭で聞き取ることも含まれる。

財物の窃取による取得とは、個人番号が記録された書面を盗むことによりこれらの情報を得る場合、施設への侵入による取得とは、個人番号が現に管理されている施設に入って閲覧することにより情報を得る場合などが考えられる。不正アクセス行為による場合とは、アクセス権限を有しない者が、電子計算機に設定されたアクセス制御機能を破ってこれに侵入して個人番号を得る場合などである。その他保有者の管理を害する行為とは、例えば、保有者の会話、会議等を盗聴したり、電波傍受などの方法で個人番号を得る場合などが考えられる。

3 個人番号の範囲

「個人番号」には「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」も含まれる(第2条第8項が本条において同様である旨規定している。)。したがって、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどしたものを、本条に規定する手段によって取得することも、本条の対象となる。

4 「刑法その他の罰則の適用を妨げない。」

個人番号が記録された有体物を、詐欺行為又は財物の窃取により取得した場合には、本条よりも法定刑の高い詐欺罪又は窃盗罪(いずれも10年以下の懲役)の構成要件にも該当することとなり、両者の関係は観念的競合(一つの行為が複数の罪に当たる場合であって、いずれの罪も成立するが重いほうの罪の刑で処断される。)となることを注意的に規定したものである。

5 法定刑等

3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金、又はこれらを併科する。

悪質な態様で個人番号を外部に流出させる行為である点において、個人番号の提供・盗用行為と同程度の非難に値すると考えられることから、個人番号の提供・盗用の罪(第68条)と同じ法定刑としている。

【第71条(職権濫用による文書等の収集)】

第七十一条国の機関、地方公共団体の機関若しくは機構の職員又は独立行政法人等若しくは地方独立行政法人の役員若しくは職員が、その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書、図画又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。)を収集したときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

個人番号は、不当なデータマッチングにより国民の権利利益を侵害する危険を内包するものであるからその取扱いは厳格になされなければならず、仮に、個人番号を取り扱う者において、特定個人情報を不当な目的で収集した場合には、社会保障・税番号制度に対する国民の信頼が失われることとなり、さらに、そのような行為は、特定個人情報等の漏えい等に密接に関連する悪質性の高い行為である。

そこで、本条においては、不当な目的をもって特定個人情報を収集する行為を罰則の対象とするものである。なお、個人番号の収集・保管については、第20条において原則禁止する旨の規定が置かれている。

1 主体

国の機関の職員、地方公共団体の機関の職員、機構の職員、独立行政法人等・地方独立行政法人の役職員である。これらの者は、情報提供ネットワークシステムを利用することで広く個人情報に接することができる立場にある上、個人番号を悪用したデータマッチングにより個人情報を広く集積することも可能であるところ、そのような不当な行為が行われた場合、集積された大量の情報が漏えいして個人の権利利益に対する大きな被害をもたらす危険がある。そこで、そのような立場にある者を主体とするものである。

2 「その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で」

「職権」とは、国の機関等の職員が有する職務権限である。「職権を濫用する」とは、当該職務権限を違法・不当に行使すること、又は職権行使に仮託して違法・不当な行為を行うことである。

「専らその職務の用以外の用に供する目的」とは、職務と全く無関係な目的に利用することや、割り当てられた職務の用以外の用に供する目的などである。「専ら」とは、収集目的のほとんど全てが「その職務の用以外の用に供する目的」であることである。例えば、名簿業者に売り渡す目的で特定個人情報を集める場合がこれに当たり、また、単に好奇心を満足させる目的の場合も含まれる。

3 「個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書、図画又は電磁的記録を収集したとき」

「特定個人情報」の意義については第2条第8項のとおりである。個人番号に代えて「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの。」を含む個人情報も含まれるため、例えば、個人番号の1,2,3…を、a,b,c…と読み替えるという規則に従って個人番号を別の数字、記号又は符号に置き換えるなどしたものを含む個人情報であっても、本条の規制の対象となる。

「収集」とは集める意思をもって進んで集めとることをいい、自己の所持に移すことが必要である。人から入手する場合のほか、電子計算機等から入手する場合も含む。文書や電磁的記録をコピーしたものを持ち帰る場合も「収集」にあたる。文書等を収集することが必要であり、閲覧することによって情報の内容を知ることのみでは本条に該当しない。

4 法定刑

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金である。

漏えい等には至っていないため第70条までの罰則よりは軽くなっているものの、漏えい等に密接に関わる行為であることなどから、これらに次ぐ重い法定刑となっている。また、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法においては同様の行為について1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされており、これらよりも法定刑が高くなっている。

【第72条(委員会の委員等による秘密漏えい)】

第七十二条第四十八条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

特定個人情報保護委員会は、特定個人情報を保護するため必要がある場合には、個人番号を取り扱う者等から資料の提出等を受けることができるなどの強い権限を有しており、特定個人情報の内容に接する機会がある。そこで、委員会の委員長、委員及び職員には第48条において秘密保持義務が課されているところ、本条はこれに違反する行為について罰則を科すものである。

1 主体

委員長、委員及び事務局の職員である。

委員長、委員については特別職の公務員であり国家公務員法の守秘義務違反の罰則規定が適用されないため、本条により守秘義務違反に対する罰則が創設されることとなる。常勤、非常勤の別を問わない。

事務局の職員については、国家公務員法上の守秘義務違反に対する罰則の規定が適用されるが、本条により法定刑が引き上げられることとなる。

これらの者が職を退いた後であっても、在職時に知り得た秘密を漏えいする行為については同様に処罰する必要があるため、本条の対象となっている。

2 「秘密を漏らし、又は盗用し」

「漏らし」とは、例えば、立入検査によって取得した特定個人情報が記録された文書を、反社会的勢力に売却することなどである。「盗用」とは、例えば、同検査によって入手した個人番号に係る個人になりすまし、当該個人番号を使って社会保障給付に係る手続を行うことなどである。

3 法定刑

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金である。

特定個人情報の機微性、委員会の権限の強さ等に鑑み、国家公務員法上の守秘義務違反の法定刑(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりも高い法定刑となっている。

【第73条(命令違反)】

第七十三条第五十一条第二項又は第三項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第51条において、個人番号の有する不当なデータマッチングの危険性等に対する安全確保のための措置として、特定個人情報保護委員会が、特定個人情報保護のために、法令違反行為をした者に対して勧告をすることができ、さらに、勧告に従わなかった場合等には当該勧告に従うよう命令を発することができるとしている。この特定個人情報保護委員会の勧告・命令の実効性を担保するため、本条において、命令に違反した者に対する罰則を規定するものである。

1 命令違反行為

委員会が命令を出すケースとしては、個人番号の取扱いについて法令の規定に違反する行為を行っている者が勧告に係る措置をとらなかった場合(第51条第2項)、個人番号を取り扱う者が法令違反行為に及んでいる場合において、勧告を前置することなく緊急に措置をとる必要がある場合(第51条第3項)がある。命令を出された者がこれに従わなかったときに、本条による罰則の対象となる。

命令は、期限を定めて出されるため、期限を経過しても命令の内容たる勧告に係る措置を講じない不作為は本条違反の行為になる。また、期限内であっても、命令に従わない旨を明確に通告するなどの場合には、本条違反の行為となる。

2 法定刑

2年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。

個人情報保護法上、主務大臣の命令に違反する行為については6月以下の懲役又は30万円以下の罰金とされており、これよりも法定刑が高くなっている。

【第74条(検査忌避等)】

第七十四条第五十二条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

1 対象行為

第52条で規定されている特定個人情報保護委員会の権限は、@「必要な報告、資料の提出」を求めること、A「関係者の事務所その他の必要な場所に立ち入」り、「質問」し、「帳簿書類その他の物件を検査」することである。本条はこれに対応して、@報告、資料の提出を拒む行為、虚偽の報告をする行為、虚偽の資料を提出する行為、A質問に対して「答弁をせず若しくは虚偽の答弁を」する行為、「検査を拒み、妨げ、若しくは忌避」する行為を対象としている。

2 法定刑

1年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。

個人情報保護法上、主務大臣に対して虚偽の報告等をする行為については30万円以下の罰金とされており、これよりも法定刑が高くなっている。

【第75条(通知カード及び個人番号カードの不正取得)】

第七十五条偽りその他不正の手段により通知カード又は個人番号カードの交付を受けた者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

個人番号カードは、券面に個人番号等が記載されている上顔写真が表示されており、また、通知カードは、写真は表示されていないものの個人番号等が記載されており、いずれも本人確認に用いられる重要なもので、不正に取得された場合には、なりすましによる情報漏えいや財産的被害等をもたらす危険がある。そこで、個人番号カード及び通知カードを不正に取得する行為に対する罰則を定めるものである。

1 「偽りその他不正の手段により個人番号カードの交付を受けた者」

「偽りその他不正の手段」とは、例えば、他人になりすましてその者の個人番号カードを取得する行為、虚偽の請求事由を記載して個人番号カードの再交付を受ける行為などが考えられる。

なお、個人番号カード及び通知カードには個人番号が記載されるため、人を欺く行為、暴行、脅迫等違法性の高い手段によってこれを取得した場合には、第70条の罪の対象ともなり得る。しかし、例えば、顔見知りの窓口職員に懇願して交付を受ける場合や、買収や甘言によって交付を受ける場合など、第70条の罪が成立しない場合もあり、これらの場合は本条のみの対象となる。

2 法定刑

6月以下の懲役又は50万円以下の罰金である。

住民基本台帳カードの不正取得は30万円以下の罰金とされており、これよりも法定刑が高くなっている。

【第76条(国外犯)】

第七十六条第六十七条から第七十二条までの規定は、日本国外においてこれらの条の罪を犯した者にも適用する。

第75条までに規定された罰則について、それらの行為が日本国外において行われた場合であっても処罰する必要があるものについて、本条において国外犯の処罰規定を設けるものである。

1 国外犯処罰の対象となるもの

個人番号利用事務等実施者の職員等が、国外において、情報を漏えいすることが考えられることから、特定個人情報ファイル、個人番号、情報提供ネットワークシステムに関する秘密の漏えい(第67条から第69条まで)及び特定個人情報保護委員会の委員らによる秘密漏えい(第72条)について、国外犯処罰の対象としている。

詐欺行為等による個人番号の取得(第70条)についても、例えば、国外において、相手を欺して個人番号を取得することなどが考えられることから、国外犯処罰の対象とされている。

職権を濫用して個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書を収集等する行為(第71条)についても、例えば在外公館の職員によって行われることなどが考えられることから、国外犯処罰の対象とされている。

2 国外犯処罰の対象とならないもの

特定個人情報保護委員会による検査権限等の行使は、国内において行われることから、命令違反(第73条)及び検査忌避等(第74条)については国外犯処罰の対象とはならない。

不正手段による個人番号カード等の取得(第75条)についても、日本国内において市町村の職員を相手として行われるものであることから、国外犯処罰の対象とはならない。

【第77条(両罰規定)】

第七十七条法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第六十七条、第六十八条、第七十条又は第七十三条から第七十五条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

罰則が規定された各行為について、それらが法人等の業務として行われた場合においては、各行為者を処罰するだけでは不十分である場合があることなどから、本条において両罰規定を設けることにより、法人等を処罰することとされている。

1 両罰規定の対象となるもの

例えば、個人番号関係事務実施者たる民間事業者が、組織的に、その保有する特定個人情報ファイルや個人番号を反社会的勢力に売り渡すことなどが考えられるため、特定個人情報ファイル又は個人番号の漏えい等(第67条、第68条)について両罰規定の対象とされている。

また、例えば、個人番号や個人番号カードを組織的に不正取得している集団が、法人の形態でこれらの行為を行うことも考えられるため、詐欺行為等による個人番号の取得(第70条)及び個人番号カードの不正取得(第75条)について両罰規定の対象とされている。

命令違反(第73条)及び検査忌避等(第74条)も、法人等の業務に関して行うことが考えられることから、両罰規定の対象とされている。なお、命令又は検査等の対象が法人等であった場合には、当該法人等は各本条により処罰され、行為者たる個人が両罰規定により処罰されることとなる。

2 両罰規定の対象としないもの

情報提供ネットワークシステムに関する秘密漏えい(第69条)、文書等の収集(第71条)、委員等による秘密漏えい(第72条)については、法人としての国の機関を処罰するということが観念できないことなどから、これらについては両罰規定の対象とはされていない。

【附 則】

【附則第1条(施行期日)】

(施行期日)

第一条この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

第一章、第二十四条、第六十五条及び第六十六条並びに次条並びに附則第五条及び第六条の規定 公布の日

第二十五条、第六章第一節、第五十四条、第六章第三節、第六十九条、第七十二条及び第七十六条(第六十九条及び第七十二条に係る部分に限る。)並びに附則第四条の規定 平成二十六年一月一日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日

第二十六条、第二十七条、第二十九条第一項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分に限る。)、第三十一条、第六章第二節(第五十四条を除く。)、第七十三条、第七十四条及び第七十七条(第七十三条及び第七十四条に係る部分に限る。)の規定 公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日

第九条から第十一条まで、第十三条、第十四条、第十六条、第三章、第二十九条第一項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)から第三項まで、第三十条第一項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分に限る。)及び第二項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分に限る。)、第六十三条(第十七条第一項及び第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)に係る部分に限る。)、第七十五条(個人番号カードに係る部分に限る。)並びに第七十七条(第七十五条(個人番号カードに係る部分に限る。)に係る部分に限る。)並びに別表第一の規定 公布の日から起算して三年六月を超えない範囲内において政令で定める日

第十九条第七号、第二十一条から第二十三条まで並びに第三十条第一項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)及び第二項(行政機関個人情報保護法第十条第一項及び第三項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)から第四項まで並びに別表第二の規定 公布の日から起算して四年を超えない範囲内において政令で定める日

本条は、本法の施行期日について規定したものである。

1 柱書部分について

この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとするものである。具体的には、個人番号及び法人番号の付番の開始等の施行の日となる(平成27年10月を予定。)。

2 ただし書き部分

(1)第1号

総則(第1章(第1条〜第6条))、秘密の管理(第24条)、主務省令(第65条)、政令への委任(第66条、附則第5条)、準備行為(附則第2条)、検討等(附則第6条)の規定については、公布の日(平成25年5月31日)から施行するものとするものである。

(2)第2号

特定個人情報保護委員会の設置の日を想定し、同委員会に関係する規定(第6章第1節、第54条、第6章第3節、同委員会の委員長等の秘密保持義務違反への罰則(第72条、第76条(第72条に係る部分に限る。)及び委員会に関する経過措置(附則第4条)の規定)について、平成26年1月1日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとするものである。

これについては、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部の施行期日を定める政令(平成25年政令第299号)において、平成26年1月1日と定められた。

なお、情報提供等事務又は情報提供ネットワークシステムの運営に関する秘密保持義務(第25条)、同秘密保持義務違反への罰則(第69条、第76条(第69条に係る部分に限る。))については、法の成立後間もなく開始される情報提供ネットワークシステムの構築及び情報提供等事務に係る情報システムの改修において、システムのセキュリティに係る情報等の運営に関する秘密が取り扱われることとなるが、罰則の適用は法の公布後一定の周知期間を要するため、これらの規定の施行日は第1号の公布の日ではなく、第2号の施行日とされている。

(3)第3号

特定個人情報保護委員会による特定個人情報保護評価指針の策定、特定個人情報保護評価の実施開始の日を想定し、関係する規定(特定個人情報ファイルを保有しようとする者に対する指針(第26条)、特定個人情報保護評価(第27条))、行政機関個人情報保護法等の特例(第29条第1項(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分に限る。))、地方公共団体等が保有する特定個人情報の保護(第31条)、特定個人情報保護委員会の業務(指導・助言(第50条)、勧告・命令(第51条)、報告・立入検査(第52条)等)、命令違反、検査忌避等に対する罰則(第73条、第74条、第77条(第73条及び第74条に係る部分に限る。))の規定については、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める施行するものとするものである。

これについては、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部の施行期日を定める政令(平成25年政令第163号)において、平成26年4月20日と定められた。

(4)第4号

個人番号の利用開始の日を想定し、個人番号の利用に関係する規定(利用範囲(第9条)、再委託(第10条)、委託先の監督(第11条)、個人番号利用事務実施者等の責務(第12条、第13条)、提供の要求(第14条)、本人確認の措置(第16条)及び別表第一の規定)、個人番号カードに関係する規定(個人番号カード(第3章)、事務の区分(第63条の一部(個人番号カードに係る部分)、個人番号カードの不正取得に係る罰則(第75条の一部、第77条の一部))並びに行政機関個人情報保護法等の特例(第29条第1項(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)から第3項まで)、第30条第1項(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分に限る。)及び第2項(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分に限る。))については、公布の日から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとするものである(平成28年1月を予定。)。

(5)第5号

情報提供ネットワークシステムを使用した特定個人情報の提供の開始の日を想定し、同システムを使用した特定個人情報の提供に関係する規定(第19条第7号、第21条から第23条まで、第30条第1項(行政機関個人情報保護法第10条第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)及び第2項(行政機関個人情報保護法第1項及び第3項の規定を読み替えて適用する部分を除く。)から第4項まで並びに別表第二の規定)については、公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとするものである(平成29年1月を予定。)。

【附則第2条(準備行為)】

(準備行為)

第二条行政機関の長等は、この法律(前条各号に掲げる規定については、当該各規定。以下この条において同じ。)の施行の日前においても、この法律の実施のために必要な準備行為をすることができる。

附則第1条に規定する施行日から特定個人情報保護委員会を立ち上げ、個人番号及び法人番号の付番、特定個人情報の提供等を実施していくためには、特定個人情報保護委員会の立上げに係る準備、個人番号及び法人番号の付番に係る準備、情報提供ネットワークシステムや関係機関における情報システムの開発に係る準備等、本法が施行される前に必要となる準備行為について、施行日前においても実施することができるようにしておく必要がある。

このため、附則において準備行為に関する規定が設けられているものである。

【附則第3条(個人番号の指定及び通知に関する経過措置)】

(個人番号の指定及び通知に関する経過措置)

第三条市町村長は、政令で定めるところにより、この法律の施行の日(次項において「施行日」という。)において現に当該市町村の備える住民基本台帳に記録されている者について、第四項において準用する第八条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知しなければならない。

市町村長は、施行日前に住民票に住民票コードを記載された者であって施行日にいずれの市町村においても住民基本台帳に記録されていないものについて、住民基本台帳法第三十条の三第一項の規定により住民票に当該住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、第四項において準用する第八条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知しなければならない。

市町村長は、住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成十一年法律第百三十三号)の施行の日以後住民基本台帳に記録されていなかった者について、同法附則第四条の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、次項において準用する第八条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知しなければならない。

第七条第三項及び第八条の規定は、前三項の場合について準用する。

第一項から第三項までの規定による個人番号の指定若しくは通知又は前項において準用する第八条第二項の規定による個人番号とすべき番号の生成若しくは通知に関する事務に従事する者又は従事していた者が、正当な理由がないのに、その業務に関して取り扱った個人の秘密に属する事項が記録された特定個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工した特定個人情報ファイルを含む。)を提供したときは、四年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

前項に規定する者が、その業務に関して知り得た個人番号を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、三年以下の懲役若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

前二項の規定は、日本国外においてこれらの項の罪を犯した者にも適用する。

第7条においては、同条の施行の日以降に新たに住民基本台帳法に記録され住民票に住民票コードが記載される者に対する個人番号の指定及び通知について規定している。これに対し、本条は、施行日において現に住民基本台帳に記録され住民票に住民票コードが記載されている者及び住民基本台帳に記録されたことはあるが住民票に住民票コードが記載されたことがない者に対する個人番号の指定及び通知について定めるものである。

1 第1項関係

個人番号の通知については、施行日から開始することを予定しており、施行日を基準日として住民基本台帳に記録されている者の個人番号を指定することとするものである。

なお、個人番号の本人への通知については、第7条に規定する個人番号の通知の方法と同様である。

2 第2項関係

施行日をまたいで別の市町村に転出・転入した者等に対する個人番号の指定及び通知について規定するものである。

施行日前に住民票に住民票コードを記載されていた者であっても、施行日前に転出届を出して転出した者の住民票は、転出前の市町村が備える住民基本台帳から削除され、いずれかの市町村に転入し転入先の市町村の備える住民基本台帳にその者の住民票が記載されるまでの間は、その者を住民基本台帳で管理する市町村長は存在しなくなる。

施行日において、いずれの市町村にも転入していない者については、施行日において個人番号を指定することができないため、その者がいずれかの市町村に最初に転入し、当該市町村の市町村長が住民基本台帳法第30条の2第1項の規定によりその者の住民票に住民票コードを記載したときに、当該市町村長が個人番号を指定し、通知することとするものである。

3 第3項関係

住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成11年法律第133号)附則第4条では、経過措置として、いずれかの市町村において住民基本台帳に記録されたことはあるが、住民票に住民票コードが記載されていない者(住民基本台帳ネットワークシステム導入時に国外にいた者等)について住民票の記載をする場合に住民票コードを指定することとしている。

当該住民票コードの記載の際に、個人番号を指定し通知カードにより通知する必要があるため、本項においてその旨を規定するものである。

4 第4項関係

本条第1項から第3項までの規定により市町村長が個人番号を通知カードにより通知する際の個人番号カードの円滑な交付を受けることができるようにするための必要な措置の内容及び通知する個人番号の生成の方法については、第7条第3項に規定する必要な措置及び第8条に規定する個人番号の生成の方法と同様であるため、第7条第3項及び第8条の規定を準用するものである。

5 第5項から第7項まで関係

本条第1項から第3項までの規定に基づいて個人番号等を取り扱う者においても、特定個人情報ファイルや個人番号を漏えい等する危険があるため、第67条、第68条及び第76条と同様の罰則を設けるものである。

【附則第4条(委員会に関する経過措置)】

(委員会に関する経過措置)

第四条附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日から起算して一年を経過する日(以下この条において「経過日」という。)の前日までの間における第四十条第一項、第二項及び第四項並びに第四十五条第二項の規定の適用については、第四十条第一項中「六人」とあるのは「二人」と、同条第二項中「三人」とあるのは「一人」と、同条第四項中「委員には」とあるのは「委員は」と、「が含まれるものとする」とあるのは「のうちから任命するものとする」と、第四十五条第二項中「三人以上」とあるのは「二人」とし、経過日以後経過日から起算して一年を経過する日の前日までの間における第四十条第一項及び第二項並びに第四十五条第二項の規定の適用については、第四十条第一項中「六人」とあるのは「四人」と、同条第二項中「三人」とあるのは「二人」と、第四十五条第二項中「三人以上」とあるのは「二人以上」とする。

特定個人情報保護委員会の委員長及び委員の人数については、第40条第1項において「委員長及び委員6人」の計7人としているが、平成26年1月の発足時には、まだ個人番号の利用開始前であり、7人の委員長・委員を必要とするほどの業務量にはならないと見込まれることから、発足当初の体制としては、委員長及び委員2人(うち非常勤1人)とし、その1年後と2年後にそれぞれ委員を2人(うち非常勤1人)任命することで、平成28年の個人番号の利用開始までには計7人の体制まで拡充することとするものである。

この際、委員長及び委員の任期を当初から全て5年とすることで、立ち上げ時の体制を最小限に抑えるとともに、委員長及び委員の任期満了の時期が一斉に到来することが防がれている。

【附則第5条(政令への委任)】

(政令への委任)

第五条前三条に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

附則第3条及び第4条に定める経過措置のほか、必要な経過措置を定めることについて、政令に委任することとするものである。

【附則第6条(検討等)】

(検討等)

第六条政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、個人番号の利用及び情報提供ネットワークシステムを使用した特定個人情報の提供の範囲を拡大すること並びに特定個人情報以外の情報の提供に情報提供ネットワークシステムを活用することができるようにすることその他この法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずるものとする。

政府は、この法律の施行後一年を目途として、この法律の施行の状況、個人情報の保護に関する国際的動向等を勘案し、特定個人情報以外の個人情報の取扱いに関する監視又は監督に関する事務を委員会の所掌事務とすることについて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

政府は、委員会の行う特定個人情報(前項の規定により講ずる措置その他の措置により委員会が特定個人情報以外の個人情報の取扱いに関する監視又は監督に関する事務をつかさどることとされた場合にあっては、委員会の所掌事務に係る個人情報)の取扱いに関する監視又は監督について、これを実効的に行うために必要な人的体制の整備、財源の確保その他の措置の状況を勘案し、適時にその改善について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

政府は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受ける者が、当該提供をする者が本人であることを確認するための措置として選択することができる措置の内容を拡充するため、適時に必要な技術的事項について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

政府は、この法律の施行後一年を目途として、情報提供等記録開示システム(総務大臣の使用に係る電子計算機と第二十三条第三項に規定する記録に記録された特定個人情報について総務大臣に対して第三十条第二項の規定により読み替えられた行政機関個人情報保護法第十二条の規定による開示の請求を行う者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、その者が当該開示の請求を行い、及び総務大臣がその者に対して行政機関個人情報保護法第十八条の規定による通知を行うために設置し、及び運用されるものをいう。以下この項及び次項において同じ。)を設置するとともに、年齢、身体的な条件その他の情報提供等記録開示システムの利用を制約する要因にも配慮した上で、その活用を図るために必要な措置を講ずるものとする。

政府は、情報提供等記録開示システムの設置後、適時に、国民の利便性の向上を図る観点から、民間における活用を視野に入れて、情報提供等記録開示システムを利用して次に掲げる手続又は行為を行うこと及び当該手続又は行為を行うために現に情報提供等記録開示システムに電気通信回線で接続した電子計算機を使用する者が当該手続又は行為を行うべき者であることを確認するための措置を当該手続又は行為に応じて簡易なものとすることについて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

法律又は条例の規定による個人情報の開示に関する手続(前項に規定するものを除く。)

個人番号利用事務実施者が、本人に対し、個人番号利用事務に関して本人が希望し、又は本人の利益になると認められる情報を提供すること。

同一の事項が記載された複数の書面を一又は複数の個人番号利用事務実施者に提出すべき場合において、一の書面への記載事項が他の書面に複写され、かつ、これらの書面があらかじめ選択された一又は複数の個人番号利用事務実施者に対し一の手続により提出されること。

政府は、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の施策の導入を検討する場合には、当該施策に関する事務が的確に実施されるよう、国の税務官署が保有しない個人所得課税に関する情報に関し、個人番号の利用に関する制度を活用して当該事務を実施するために必要な体制の整備を検討するものとする。

政府は、適時に、地方公共団体における行政運営の効率化を通じた住民の利便性の向上に資する観点から、地域の実情を勘案して必要があると認める場合には、地方公共団体に対し、複数の地方公共団体の情報システムの共同化又は集約の推進について必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとする。

本条は、法律の施行(附則第1条柱書きの施行)後3年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、この法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとすることを定めるとともに、番号制度の導入に伴い、政府が検討するべき事項を併せて規定するものである。

見直し規定については、規制改革推進のための3か年計画(平成19年6月22日閣議決定)において、「法律により新たな制度を創設して規制の新設を行うものについては、各府省は、(中略)当該法律に一定期間経過後当該規制の見直しを行う旨の条項(以下「見直し条項」という。)を盛り込むものとする」とされていることを踏まえて設けられている。

1 第1項関係

本項に基づく見直しの具体的な内容については、個人情報保護措置も含めた法案全体の検討を行うことを想定している。

番号制度の活用による国民の利便性の向上や行政の効率化等の便益については、個人番号の利用及び特定個人情報の提供の範囲の拡大に比例して増加することが見込まれることから、見直しの観点として、個人番号の利用や情報提供ネットワークシステムを利用した特定個人情報の提供の範囲を拡大すること、特定個人情報以外の情報の提供に情報提供ネットワークシステムを活用することができるようにすることを明示する。

2 第2項関係

本項は、昨今の行政機関や民間企業等における個人情報の流出事件が頻発している状況や我が国に個人情報全般の取扱いを監視監督する第三者機関が存在しないために日本企業がEU諸国との間の商取引上の不利な取扱いを受ける懸念が生じている状況等を背景として、個人情報全般を監視・監督する第三者機関の必要性が指摘されていることを踏まえ、特定個人情報保護委員会における監視・監督について、

個人情報の保護に関する国際的な動向等も踏まえ、第6章(特定個人情報保護委員会)第2節(業務)に定める範囲にとどまらず、個人情報一般の取扱いについてもその範囲に含めることについて検討を行うことが想定されている。

なお、この検討については、他の法律による検討、例えば個人情報保護法制の在り方の検討の中で行われることもあり得ることから、第1項とは別の項を立てて規定している。

3 第3項関係

本項は、特定個人情報保護委員会における監視・監督の実効性を確保すべく人員面・財政面の両面において必要となる措置を行うべきことを定めるものである。特定個人情報保護委員会については、第2項において監視・監督の対象を第6章(特定個人情報保護委員会)第2節(業務)に定める範囲から個人情報一般の取扱いに拡大するよう検討し、所要の措置を講ずべきことが規定されているところであるから、本項により、当該検討結果に併せて必要な人的体制の整備及び財源の確保を行うことが期待されることとなる。

4 第4項関係

本項は、第16条に定める本人確認措置として、民間における技術開発の動向や当該技術の普及状況に応じて、個人番号カードに組み込まれる認証技術以外の技術の導入について検討を行うことを想定している。具体的には、スマートフォンやタブレット端末等による認証技術や生体認証技術の導入などが考えられる。

5 第5項関係

本項は、政府が、特定個人情報の提供又は提供の求めに関する情報提供ネットワークシステム上の記録について、@本人から総務大臣に対する当該記録の開示請求に対してこれを提供するための情報提供等記録開示システムを設置すること及びA当該開示請求について年齢・身体的な条件等により当該請求が妨げられないための措置を講じることを求めるものである。

具体的には、上記記録の開示請求は主として情報提供等記録開示システムを通じて行うことが想定されていることから、幅広い年齢層に対応できるようユーザビリティを確保すること及び身体的な制約を考慮して、代理人等による開示請求の手段等に関する措置が講じられることが期待される。

6 第6項関係

本項は、情報提供等記録開示システムについて、政府がその機能に関して検討すべき内容を規定するとともに、同システムを介して行われる情報の授受を行う場合における本人確認の方法に関して検討すべき事項を定めるものである。

7 第7項関係

社会保障・税番号制度は、給付付き税額控除制度を導入する場合に活用することも考えられることから、衆議院において附則第6条が修正され、本項が追加されたものである。

8 第8項関係

番号制度の導入に伴い、各機関において既存業務システムの改修や他機関と情報提供ネットワークシステムを利用した情報連携を行うためのシステム整備やデータの標準化等の作業が必要となるが、特に地方公共団体においては、社会保障分野の事務の大部分を担っており、対応が必要な情報システムを多数保有していることから、作業を効率的に進めることが課題とされている。

地方公共団体における情報システムの共同化・集約化を推進することで、効率的なシステム整備を行うことが可能となり、円滑な番号制度の導入及び安定的な運用にも資することから、地方公共団体の情報システムの共同化及び集約化に関して、政府が地域の実情を考慮しながら、必要な情報の提供、助言等の協力を行うべきことを定めるものである。



【別 表】

【別表第一(利用範囲)】

本法では、個人番号を利用することができる場合を法律上に明記することとしている。具体的には、第9条第1項において、別表第一の上欄に掲げる者(法令の規定により別表第一の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。)又はこれらの者から当該事務の全部又は一部の委託を受けた者は、当該事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる旨を規定している。

具体的には、別表形式を採っており、別表第一として、上欄に個人番号を利用することができる者を、下欄に個人番号を利用することができる事務を、それぞれ規定している。

【別表第二(情報連携)】

本法では、第19条において特定個人情報の提供を原則禁止しているが、同条各号において、例外的に特定個人情報の提供が認められる場合を規定しており、その一つとして、同条第7号において、情報提供ネットワークシステムを使用して情報提供を行う場合を規定している。

具体的には、別表形式を採っており、別表第二として、第一欄に情報照会者を、第二欄に特定個人情報の提供を必要とする事務を、第三欄に当該特定個人情報を提供する情報提供者を、第四欄に提供する特定個人情報を、それぞれ規定している。


出典:内閣官房 マイナンバー 社会保障・税番号制度
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/pdf/chikujou.pdf

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